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大相撲行司セクハラ事件、式守伊之助の言い訳に潜む「2つの問題点」

人権よりも協会ルールが大事なのか
原田 隆之 プロフィール

セクシャリティの問題へのすり替え

次に大きな問題は、「男色の趣味はない」という言い訳である。まず、男色であることは「趣味」の問題ではなく、性的指向であり生き方の問題である。

これは、単なる言葉遣いの問題ではなく、性的指向の多様性やLGBTの人々の人権に関する意識が高まりつつある今日において、いかにも時代遅れの意識を持っていることを図らずも露見させたものである。

そしてここにもまた、角界の旧態依然とした人権意識が見えてしまったと言っても過言ではないだろう。

そして、何より問題なのは、この事件は「男色の趣味」があるかないかはまったく関係ないにもかかわらず、それをセクシャリティの問題にしようとしていることである。

「男色の趣味はないので、なぜこのような行為をしたのかわからない」というならば、「男色の趣味」があったのならば、このような行為をしたことの説明がつくとでもいうのだろうか。

そんな馬鹿なことはない。

 

同性愛だろうが、異性愛だろうが、分別のある大人であれば、同意のない他者の身体に、一方的に触れたり、性的な振る舞いをしたりはしない。この事件とセクシャリティとは、まったく関係がない。

また、彼にとって、事件を起こしたことよりも、同性愛者として見られることが屈辱的だったのではなかろうかとも思える発言でもある。これらのことから、同性愛者を見下し、差別する意識が透けて見える。

事件を受けて、同じ部屋に属する横綱白鵬も、「昔は彼の付き人をやっていましたが、そんな趣味はないと思いますけど」と笑いながら述べていた。相も変わらずだと、呆れるほかない。

〔PHOTO〕gettyimages

相撲協会はまたお茶を濁すのか

今後相撲協会は、本人についての懲戒処分を話し合うとのことである。宮城野親方も「言い聞かせて酒をやめてもらう」と話していた。

一方、協会全体としては、暴力事件にしても、今回の事件にしても、理事長による講話といったその場しのぎのお手軽な対策だけでお茶を濁すのだろうか。

八角理事長は、「これまでも過度の飲酒をしないように」ということを繰り返し訓示してきたと述べていた。だとすれば、それに効果がないことは明白ではないか。

暴力事件の後も、全力士を集めて、講話をしたことは記憶に新しい。彼らにはそれくらいしか打開策がないというのが悲しい。

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