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リーマンショック前と酷似する日本経済の問題はコレだ

内需主導の自律的な景気回復が始まるか
竹中 正治 プロフィール
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リーマンショック後の落込みが米国の2倍以上のわけ

同じパターンであることの何が問題か。

2008年のリーマンショックで起こったことを想起しよう。言うまでもなく金融危機の震源地は米国だった。米国の2008年~09年の実質GDPの落込みは2年累計でマイナス3.1%である。

日本では欧州とは異なり金融面での米国からの危機の伝染はマクロ的には軽微だった。それにもかかわらず、日本の2008年から09年のGDPの落込みはマイナス6.5%と米国の倍以上となった。

この時、米国では失業率がピーク時10%台まで跳ね上がった一方、日本では景気対策で雇用維持の補助金などを大判振る舞いしたおかげで、3.6%からピーク時5.5%への上昇で済んだ。しかし、不況で失われたGDPや国民所得の変化は、日本の方がずっと大きかったわけだ。

なぜそのようなことになったかというと、日本のGDP成長率の半分が純輸出の寄与で占められていたからだ。逆に言えば民間最終消費の寄与度が小さいという景気回復パターン自体が原因だ。

つまり海外需要が落ち込むとGDP全体が大きく落込むのだ。また日本の民間企業設備投資は輸出の伸びと連動する傾向が強く、海外需要の減少→輸出減少→設備投資減少という経路もGDPの落込みに拍車をかける。

こうした日本の景気回復パターンと対照的なのが米国である。図1の右端に示した通り、米国の2000年~16年の平均実質GDP成長率は2.0%で、民間最終消費の寄与度が1.6%と成長率の8割を占める内需依存型だ。リーマンショック後の景気回復期もこのパターンは変わっていない。

要するに、日本は再び海外景気が何かの事情で失速すれば、目立った景気後退を余儀なくされるという非自律的な回復パターンから抜け出せていない。しかもこのままだと次の景気後退時には、金融政策面でも、財政面でも効果的な対策を打つ余裕がほとんどないという事態になりかねない。

 

何が自律的な景気回復を阻んでいるのか

では、何が日本の自律的な景気回復を阻んでいるのか。ひとことで言うならば、民間企業部門の過剰な貯蓄超過である。図2をご覧頂きたい。

これは日本の主要部門(家計、非金融法人、金融機関、一般政府、海外、その他)の年間の資金過不足の推移を示したものだ(日銀資金循環表)。

マイナスはその部門の資金収支が不足で資金を調達していること、プラスは資金余剰で貯蓄していることを示す。

この各部門の資金収支の変化を見ると、1990年代に起こった日本経済の構造変化が良くわかる。 

まず緑で示した非金融法人部門(以下「一般企業部門」と言う)が90年代後半に資金調達超過から貯蓄超過(債務返済)に転じ、その後ずっと貯蓄超過で推移している点に注目頂きたい。

ほぼ時を同じくして赤で示した一般政府部門は資金調達超過(財政赤字)に転じ、やはりそれが恒常化している。黄色で示した家計部門は90年代までの大幅な貯蓄超過からは縮小したが、2000年代以降も貯蓄超過で推移している。青色の海外(日本以外)部門は一貫して資金調達超過であり、これは日本の経常収支黒字に対応している。

ここで注目して頂きたいのは、90年代を境に一般企業部門と政府部門の資金過不足関係が逆転し、以降それが恒常化していることである。これには主に2つの理由が考えられる。

第1に日本の企業部門はバブル期の過剰投資で90年代に過剰債務を抱え、その調整のための債務縮小(=貯蓄超過)が90年代後半から起こった。不況で資金繰りが苦しかった時期なのに「貯蓄超過」と言われることに釈然としない経営者もいるだろうが、債務返済=貯蓄超過なのだ。 

第2に90年代後半の金融危機と深刻な不況を境に企業経営者の日本経済に対する成長率見通しが低下し、設備投資を抑制するスタンスが強まった。

その結果、企業部門全体の資金過不足が貯蓄超過基調となった。そしてこの企業部門の投資抑制スタンス自体が自己実現的に日本経済の低成長をもたらすという循環的な因果関係が働いてしまっていると考えられる。

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