企業・経営

モスバーガーが「創業以来2度目の絶不調」に苦しむ致命的な原因

強みが弱みに変わってしまった
王 利彰
このエントリーをはてなブックマークに追加

二度目の不振に陥った「ふたつの原因」

しかし今、モスバーガーは突然の不振に陥っている。理由は大きく言ってふたつ考えられる。

第一の原因は、モスバーガーの「強み」であったフランチャイズ・システムであろう。直営店中心のマクドナルドとは異なり、好調時のモスバーガーはフランチャイジーの店舗が中心であり、全国約1500店のうち直営店舗は100店に満たなかった。

しかし最近では、直営店舗数がなんと300店舗以上に増えている。

かつて、モスバーガーの強みは地方の優秀な個人フランチャイジーが多いことであり、最盛期には500名近いフランチャイジーがいた。また、店舗経営の指導は本社が行うのではなく、フランチャイジーに「共栄会」という組織を作らせ、その共栄会で店舗同士を指導させるという、独特ながら効率の良いシステムであった。

(参考:モスバーガー共栄会 http://www.mos.co.jp/company/csr/society/kyoeikai/

 

ちなみに、モスバーガーの本社とマクドナルドの本社へ訪問すると、両社の違いがよくわかる。

マクドナルドの本社はビジネスライクなそっけない対応で、よほど重要な顧客でなければお茶一杯も出さない。一方、モスバーガーの本社を訪問すると、にこやかな受付嬢(派遣社員ではあるが)が応対し、コーヒーなどの飲み物が丁寧に出される。その理由は、フランチャイジーの訪問が多いことなのだ。「フランチャイジーも大事な顧客である」というモスバーガーの考え方がここに表れている。

この「フランチャイジーを丁寧に扱う」という哲学は、成長が続いた時代にはプラスに働いたのだろうが、日本全体の人口減とデフレ経済の継続で、いつしかマイナス要素となってしまった。業界でも比較的早い時期から個人オーナーによるフランチャイジーを展開したために、彼らの高齢化が進行しているのだ。それによる店舗リニューアルの遅れを解消したり、廃業するフランチャイジーの店舗を買い取る必要が生じたりしていることが、直営店の増加につながっているのだろう。

もうひとつ、以前とは大きく環境が変わった点が、「異業種」との戦いの激化だ。

マクドナルドが3年にもわたって不調だった間、モスバーガーは店舗数を伸ばすことができなかった。その理由は同業他社ではなく、異業種との競合激化だった。特に脅威となったのが、コンビニの売り上げ増大と低価格戦略である。

マクドナルドが「100円コーヒー」で話題を呼んだことを受けて、コンビニ各社も「100円コーヒー」を売り出し、マクドナルドに大きなダメージを与えた。また近年のコンビニ・ドーナツの販売は、ミスタードーナツに壊滅的ダメージを与えたし、カウンターで販売するフライドチキンは、ケンタッキーフライドチキンの成長を止めている。

前述したように、マクドナルドをはじめとするファストフードチェーンは「一等地」への出店にこだわるため、地の利でこれを多少はカバーできる。しかし、「二等地戦略」を強みとしてきた、しかも比較的価格の高いモスバーガーの場合、近隣のコンビニがダイレクトな競合となり、より大きなダメージを与えられているようなのだ。

以前、筆者の自宅近くには、モスバーガーの1000号記念店があった。2017年に入って改装が始まったので、どんな店になるのかと期待していたのだが、工事が終わるとなんとモスバーガーはなくなり、隣のセブンイレブンが店舗を拡張し、惣菜を強化したイートイン客席を備えた店に変わってしまった。まるでモスバーガーの不振の原因を物語っているかのようだった。

さらに今後、モスバーガーを脅かすであろう存在が、続々と日本展開を始めた「黒船バーガー」である。

Photo by gettyimages

現在、ファストフード業界では、モスバーガーを追うロッテリアやフレッシュネスバーガー、さらにファーストキッチンを傘下に入れたウェンディーズ、バーガーキングなど、各社が一斉に態勢を刷新しつつある。そこに加え、マクドナルド不振の間隙を突くようにして、海外から高級・健康的イメージが売りのハンバーガーチェーンである「カールスジュニア」、「シェイクシャック」、「UMAMIバーガー」、「ザ・カウンター」などが続々と日本進出してきている。

海外からの「黒船バーガー」は、「品質」「健康志向」を最大の売りにしてきたモスバーガーと、真っ向からバッティングすることになる。モスバーガー復活の道は、意外にも長く険しいものになるのかもしれない。

王利彰 (おう・としあき):立教大学卒業後、家業の飲食店,レストラン西武(現・西洋フードシステムズ)ダンキンドーナツ部門を経て、日本マクドナルド入社。SVプロフェッサー、統括SV,運営統括部長、機器開発部長などを歴任したのち退社し、外食コンサルタント会社「清晃」を設立。2004年から2009年3月まで立教大学ビジネスデザイン研究科教授(大学院)、2011年から2015年には関西国際大学教授を務めた。
記事をツイート 記事をシェア 記事をブックマーク