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銀座のキャバレー「白いばら」が、心から惜しまれながら閉店する理由

経営は順調だったのに

銀座の一等地で成功し続けた唯一のキャバレー

「白いばら」という店の名前を、耳にしたことはあるだろうか?
 
東京・銀座で、ただ一軒生き残る正統派キャバレー。1931年(昭和6年)に「広島屋」という名前の食堂として深川に開店し、その後、幾度か名前を変え形を変え、1951年(昭和26年)に現在の「白いばら」という名前で本格キャバレーとして営業を始めた。

銀座の一等地「ガス灯通り」で目を引くブルーの外壁。輝く金色のネオン。外壁から突き出した藍色の看板には、レトロな書体で記された店名と白い薔薇のマークが光っている。

銀座三丁目のど真ん中、松屋銀座の一本奥に位置する。

外観もさることながら、黒服に誘われて店内に足を踏み入れると、そこはまさに「ザ・昭和」‼ 真っ赤なビロードのソファ。赤と黒、ゴールドを基調としたゴージャスな内装。鏡張りの壁には無数のライトが映って星のようにきらめいている。

フロアは1階と2階に分かれ、中2階は生バンドが演奏するためのステージ。ショータイムにはドレス姿の歌手が宝塚のように歌いながら階段を下りてくる。一階中央のホールで繰り広げられるきらびやかな歌とダンス。

ここはどこ? 今はいつ? まるでタイムスリップしたみたいだ。いつか石原裕次郎の映画で観たような、昭和30年代くらいの古き良き時代へ……!!
 
銀座の老舗キャバレーといっても、この店の料金設定は意外なほどに良心的だ。平日ならビールとおつまみがついて3時間9600円。指名料は、本指名3000円、場内指名1500円。フードや飲み物も、普通の飲食店と変わりがないくらいなのでびっくりする。

高級クラブとは一線を画し、明朗会計、明朗経営がモットーの大衆的な店は、「夜の大人の遊園地」というキャッチフレーズで、今も昔も多くの人たちに愛されている。
 
が、しかし、昭和の輝きを残すこの名店は、2018年1月10日、87年の歴史に幕を下ろすこととなった。

 

経営は順調だったのに

経営状況が悪化したわけではない。何十年にも渡って通い続ける常連客がいる。町内会や仕事の組合などの団体客も多い。最近では、昭和レトロな雰囲気やショーを目当てに来店する女性客も増えた。

昭和30年代から40年代にかけての最盛期、全国に200軒以上あったキャバレーは、時代の流れに沿うことができず次々と姿を消していったが、「白いばら」は、誠意のこもったサービスと創意工夫。安心、健全、大衆向けというポリシーを貫くことで変わらぬ人気を誇ってきた。

「あなたの郷里の娘を呼んでやって下さい」。店の外にある地図には、ホステスの名が出身地ごとに貼られている。これも入店しやすいようにするサービスだ。

なのに何故? どうして今、閉店しなければならないのだろうか。

その理由は、実はシンプルなものだった。建物の老朽化だ。

木造2階建ての上に事務所部分のある現在の店舗は、昭和21年に建てられ、横の土地を借り増しして増築を重ねてきたもの。築70年を越す店内では雨漏りがすることもあり、大きな地震が来れば倒壊の危険性も考えられる。

いつまでも、この建物で営業を続けることができるはずはなかった。いつかは、この古い店舗を壊さなければならなくなるだろう。だけど「白いばら」を愛する人たちは、その現実から目を背け、このままずっと変わらぬ夜が繰り返されていくことを信じていたかったのかもしれない。
 
が、その日は突然やってきた。

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