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名門企業・大企業の早期退職者が陥りやすい「意外なワナ」

「大転職時代」を生きるすべての人へ
秋山 輝之 プロフィール
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ところが、入れそうな会社を選んで応募しているにもかかわらず、書類選考の段階でふるい落とされることが多く、ときどき面接の機会に恵まれても(田中さんと企業の)双方とも魅力を感じられず、焦る気持ちと裏腹にうまくいかない時期はさらに続きました。

田中さんから私に、ある企業へのツテがないかという相談の電話があったのは、ちょうどそのころのことでした。

電話口の田中さんは、退職を決断して以来、面接日以外は自宅に引きこもって過ごしてきたこと、転職活動に相当苦戦していることを告白したあとで、「転職活動の意味がようやくわかってきました。これまではどこか前職と比較しながら活動していたのですが、いまはこれからの自分がどうしたら転職先で役に立てるかと考えられるようになってきました」と力強く語り、何か吹っ切れた感じが私にも伝わってきました。

私から特段のアドバイスをしたわけではありませんが、その電話から1か月後、田中さんは転職を決めました。早期退職応募を決めてから8か月。この時間は、次の職場に出会うために必要な就職活動期間だったと言えます。しかしそれ以上に、身も心も一つの企業に捧げてきた田中さんが、新たな企業で働く意欲と自信を構築するための時間だったと、私は思うのです。

本稿の前半で述べたように、リーマンショック後といまを比べると、早期退職応募から転職までにかかる時間はほとんど変わっていません。これだけの人手不足にもかかわらず、です。田中さんの8か月間におよぶ心と身体の動きは、その理由を雄弁に物語っているように思います。

 

転職は突然できるものではない

いま勤めている会社をやめることがありうる。それも突然に。であれば、有時のためにふだんから何をしておくことができるのか。人脈を広く持ち、いつでも次の行く先を用意しておくことできれば、それに越したことはないでしょう。でも、それは誰にでもできることではありません。

まずは、突然の退職の覚悟を持っておくこと。転職を考えることをタブーにせず、早期退職を迫られる前に、ふだんから考えておくこと。そして、もし転職の兆しが見えたなら、何を武器にどのようなキャリア・企業で勝負したいのかを具体的に考えることが肝要です。加えて、できることなら、実際に転職活動をしてみること。面接官として中途採用面接にかかわる経験も、将来の転職にとって有益です。

ご存知かもしれませんが、いまや多くの会社が、早期退職優遇制度のような転進支援をはじめとする従業員の退職施策をオプションとして用意している時代。従業員であるあなただけが、ストイックに(あるいは精神論で)会社に奉仕することだけを考えているのは、あまりに無防備すぎるのではないでしょうか。

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