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上野千鶴子が問う、「銃後史ノート」に学ぶ女たちの戦争責任

女たちは、人口戦において戦士だった
上野 千鶴子 プロフィール

SEALDsメンバーと全共闘時代の共通点は?

この『銃後史ノート』を、WANミニコミ図書館に収蔵したいというのが念願だった。著作権問題等でハードルが高く、なかなか実現しないところに、いっそのこと、この内容を若い読者に読んでもらって、異世代間交流をしようという企画が持ち上がった。ミニコミ図書館に収蔵されたものも、読まれなければデッドストック(死蔵品)。寝た子を起こして、いまどきの読者に出会ってもらう、そしてそこで起きる化学反応を見たい、という動機からである。

こうして、昨年11月11日、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク主催のイベント「こうして戦争は始まる――孫世代が出会う『銃後の女たち』」が上智大学で開催された。

2017年11月11日に開催されたイベントのチラシ

『銃後史ノート』の書き手からは、リーダー格の加納実紀代さんと常連執筆者のむらき数子さんにご登場ねがった。さらに現代の戦争が、かつてのような泥臭い戦争ではなくなり、女性兵士も参戦できるハイテク戦争になったことを踏まえて、「自衛隊とジェンダー」をテーマにした先駆的な研究者、佐藤文香さんにもスピーチをお願いした。

他方、「孫世代」の読者としては、40代、30代、20代の女性を指名。40代からは作家の川上未映子さん、30代からは漫画家・作家の小林エリカさん、20代からは元SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)のメンバー、福田和香子さん。どなたもお声掛けしたら、即答で引き受けてくださった。コーディネーターは上野が務めた。

その後に実は「宿題」が待っていた。加納さんからは3人の「孫世代」の読者に向けて、『銃後史ノート』掲載の論文からそれぞれ3点ずつを「指定文献」として事前に読んでくるように指示が出た。気軽に引き受けたのはいいが、後からこんな負担がかかってくるとは、誰も思っていなかっただろう。

そのうえ、やりとりを充実したものにするために、あろうことか、これらの文献をPDF化してミニコミ図書館上にアップ。参加申し込み者に事前に読んでくることを求めるという、大学のゼミみたいなハードルの高いイベントになった。あとからとったアンケートでは、200名近い参加者の6割以上が事前に指定文献を読んでくるという準備のよさ。主催者にも参加者にも熱意が感じられたイベントだった。

3人の「孫世代」に指定された文献のなかには、こんなものがあった。

川上未映子さんには長谷川啓『「母性」からの離陸とその挫折—尾崎翠における自我の構図』(復刊1号)。大正モダニズムの香りが残る自我の格闘が着地点を失って閉塞する大戦前夜の状況は、現在でもよそごとはないはすだ。

小林エリカさんには、加納実紀代『〈死〉の誘惑—三原山自殺ブームをめぐって』(復刊1号)。神奈川県座間市の9人連続殺人事件が自殺志望者を対象にしたように、「三原山心中」と呼ばれる道連れ自殺は、このころからあった。時代閉塞は自殺率を高めるが、実際に戦争が始まると自殺率が低下するのも奇妙な現象である。

福田和香子さんには大宮みゆき『「非常時共産党」の中の女たち』(復刊1号)。革命運動のなかにも「ハウスキーパー」という名の性別役割分担と女性の搾取があることは戦前から知られていた。全共闘世代の女たちはそれに抗議して、リブを起こしたが、それから半世紀後のSEALDsの仲間たちのあいだではどうだったのか?