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どうやらトランプは、2025年までやる気まんまんらしい

2017年のアメリカ政治を総括する

本人は「2025年までやる気」

2017年のトランプ政権は、発足時に掲げた「イスラム教国7カ国からの米国入国禁止」公約に始まり、クリスマス休暇直前の税制改革法案成立まで、話題に事欠なかったといえます。本稿ではトランプ政権の1年間を振り返り、来年の政権運営の争点と行方を展望してみます。

今年1月20日の大統領就任からほぼ1年間、トランプ大統領は身内である与党共和党内の対立が激化したために、連邦議会で法案が通過せず、成果を上げることができませんでした。ようやく税制改革法案が成立したのは、実に12月22日のことです。この時トランプ大統領は、「歴史的な勝利だ」と豪語しています。

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この税制改革法案では、法人税率は35%から21%に引き下げられ、米国企業のみならず日系や独系などの海外進出企業も、減税で収益を得ることになります。その結果、大型減税で恩恵を受ける企業は、米国内に留まる可能性が高くなりました。

トランプ大統領は、2016年の大統領選挙で「企業が海外移転をして、国内の雇用を潰すようなことはさせない」と、労働者に繰り返し訴えました。今回の税制改革法案によって企業が米国内に留まり、投資と雇用が促されるならば、一応は選挙公約を果たしたといえます。

一方、今回の法案では法人税率に加えて、個人の所得税率も引き下げられるのですが、こちらは8年間の時限措置で2025年に期限が切れます。次の大統領選挙は2020年です。仮にトランプ大統領が再選され、さらに4年間政権を握れば、大統領職を退くのは25年になります。トランプ大統領は、こうしたタイムスケジュールまで見据えているのでしょう。この点は看過できません。

 

「岩盤支持層」へのアピールに専念

連邦議会で法案が通過しないため、その間にトランプ大統領は大統領令を駆使して選挙公約を実現しようとしました。米CNNによると、大統領は就任式から10月13日までに49の大統領令に署名しています。ちなみに、同じ時期で比較しますと、バラク・オバマ前大統領は26、ジョージ・W・ブッシュ元大統領は33、ビル・クリントン元大統領は38の大統領令を発令しているので、トランプ大統領は相当に早いペースで出したことになります。

大統領令によって、厳格な移民制度、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉、環太平洋経済連携協定(TPP)脱退、「パリ協定」離脱、イラン合意見直し、「エルサレム首都移転」承認と、次々に選挙公約を遂行していったのですが、それらはいずれも大きな論争を呼び、痛烈な批判を浴びました。

にもかかわらず、トランプ大統領は「エルサレム首都移転」承認の際もそうでしたが、ことあるごとに「選挙公約を果たした」と演説の中で強調し、「支持者との約束を守る大統領」を自己演出することに余念がありませんでした。

ただし、選挙公約の目玉であったメキシコとの「国境の壁」建設と、バラク・オバマ前大統領の医療保険制度改革法(通称オバマケア)の完全な廃案はまだ達成できておらず、一部の破棄に成功したのみです。

今回成立した税制改革法案で、オバマケアにより義務化されていた個人の医療保険加入が廃止になりました。医療保険を購入しない米国民に対して罰金を科す条項があったのですが、それを破棄したわけです。

これによって、次の10年間で1300万人の無保険者が発生すると試算されていますが、この政策はトランプ大統領の支持基盤の一角である保守系の市民運動「ティーパーティー」の人々を満足させる結果になりました。彼らは2010年の中間選挙以来、「オバマケアによる医療保険加入の義務化は、個人の自由を奪い、米国の価値観に相反する」と強硬に主張してきたからです。

トランプ大統領の言動の背景には、必ず支持基盤の存在があります。8月に南部バージニア州シャーロッツビルで発生した白人至上主義者と反対派の市民グループとの衝突事件では、拙記事「トランプがどんなに叩かれても『白人至上主義』を捨てられない理由」で指摘しましたように、双方に責任があるとして、「喧嘩両成敗」の立場をとりました。トランプ支持の白人至上主義者を非難することを避けたわけです。

12月6日に発表したイスラエルの「エルサレム首都移転」承認に関しては、「セクハラ疑惑回避のために、トランプが『北朝鮮カード』を切る可能性」で説明したように、来年の中間選挙と再選選挙に向けて、敬虔なユダヤ教徒とキリスト教右派の支持者をつなぎ止める意図がありました。

21日に税制改革法案が米議会で通過すると、トランプ大統領は閣議の冒頭、閣僚と共に、大型減税法案を通過させてくれた神に感謝の祈りをささげました。それだけでなく、この様子をカメラに撮らせたのです。もちろん、これもキリスト教右派を意識した演出です。

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選挙期間中と同様、就任後もトランプ大統領は、人種・民族及び宗教の面で幅広い有権者を狙うのではなく、標的を明確化し、特定の支持者のみを満足させる政策を打ち出す「ピンポイント戦略」をとりました。この戦略が功を奏したのか、この1年間、各世論調査機関によるトランプ大統領の支持率は確かに低空飛行でしたが、30%後半から40%前半で安定していました。

ただし、この戦略では新たな支持層を獲得することはできません。来年も「ピンポイント戦略」を継続する限り、支持層の拡大が見込めないことは間違いありません。

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