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自衛隊が悲願の空母を「急ぐ理由」と「浮かぶ疑問」

載せるのは、例の「ポンコツ戦闘機」
半田 滋 プロフィール

背後にある「アメリカへの不信感」

ここへ来て「いずも」を改修して空母とする計画が急浮上したのは、集団的自衛権行使を可能にした安全保障関連法(安保法)の施行や安倍晋三首相の主導で進む憲法改正の動きと無関係ではない。

安保法は攻撃的兵器の保有にお墨付きを与え、また改憲によって自衛隊が憲法に明記されれば、専守防衛の枠から一歩踏み出す可能性は高い。

防衛省が12月になって急きょ、長射程の巡航ミサイル3種の購入費を来年度防衛費に計上したのも専守防衛から踏み出す意思の現れといえる。ミサイル3種のうち2種の射程は900kmと長く、日本海や東シナ海の戦闘機から発射すれば、北朝鮮や中国を攻撃できる「敵基地攻撃能力」の保有につながる。(2017年12月21日、現代ビジネス「自衛隊の『敵基地攻撃ミサイル』の実効性に関する大いなる疑問」)

新艦艇の建造ではなく既存の「いずも」を改修する案となったのは、空母保有を急ぐからにほかならない。

安倍政権下で空母保有を確実にするには、18年度中に改定案をまとめる次期「防衛計画の大綱」に具体的な指針を盛り込む必要があると判断したからだ。

例えば中国は旧ソ連の未完成空母「ワリャーグ」を購入し、改修して空母「遼寧」として2012年に就役させたが、艦隊運用までに4年以上の年月を必要とした。海上自衛隊が新造の空母を計画した場合、建造だけで5年を要し、就役にはさらに数年かかる。

 

防衛省は、中国の軍事力強化に対抗して空母を沖縄の離島防衛に活用する計画でいる。25年以上にわたり、国防費をほぼ二桁で延ばしてきた中国は、年を追うごとに自衛隊の戦力を上回りつつある。

本来なら中国対処に日米安全保障条約にもとづき、米軍の打撃力に期待するのが順当だが、安倍政権下の15年4月、「日米防衛協力のため指針」(ガイドライン)が改定された。地球規模での日米連携を約束する内容となった一方で、1997年改定の前ガイドラインと比べ、日本防衛をめぐる米軍の関与は大幅に後退した。

ガイドラインによると、「日本への武力攻撃が発生した場合」の作戦構想、弾道ミサイル対処、海域防衛、陸上攻撃の4例について、いずれも「自衛隊と米軍は共同作戦を実施する」とした。だが、米軍は「自衛隊の作戦を支援し及び補完するための作戦を実施する」とあり、「支援と補完」程度の関与にとどまることになった。

また前ガイドラインをみると、航空侵攻で米軍は「自衛隊の行う作戦を支援するとともに、打撃力の使用を伴うような作戦を含め、自衛隊の能力を補完するための作戦を実施する」とあり、爆撃機など自衛隊が保有していない「打撃力の使用」を約束している。

海域防衛では「機動打撃力の使用」とあり、攻撃機を搭載した空母の活用を明記した。また着上陸侵攻対処では「侵攻の規模、態様その他の要素に応じ、極力早期に兵力を来援」と具体的な支援策を打ち出している。

15年のガイドライン改定は日本側が米側に持ちかけた。尖閣をめぐる中国との対立から、米国を日本側に引き込む狙いがあった。その代わり日本は自衛隊を米国の世界戦略に積極的に差し出すことにしたが、結局、見返りはなく、「米国を尖閣問題に関与させる」という思惑は大きく外れたことになる。

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