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国家・民族 週刊現代 日本

「日本人とは何か」「歴史の真実とは何か」を知るために私が読んだ本

櫻井よしこさんが選ぶ「最高の10冊」
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東北に学ぶ日本人の強さ

私は18歳のときに、父の仕事の関係もあって、ハワイ大学に入学しました。高校は新潟の長岡高校ですから、その環境の変化は大変なものでした。周囲が外国人ばかりのなか、自分は日本人なのだということを認識させられ、その頃から、日本人の起源について興味を持つようになりました。

日本は西の文化と東の文化に分かれますが、私は日本人の自然とともに生きる土着の力強さは東、とくに東北に根差していると考えています。

東北学』には東北の文化が縄文時代の人々の生活と繋がっていること、その生活がどれだけ高度で楽しく豊かなものであったかが書かれています。

例えば、青森の三内丸山遺跡から出土した動物の遺骸や骨から、縄文人が体内に脂肪を蓄積した雄を選んで獲っていたことがわかります。つまり、飢えを満たすだけでなく、美味しいものを食べるために、また子を産む雌を避けて狩りをしていた。紀元前の途方もない昔に生きた日本人の祖先がそんな風に生活を楽しんでいたとは、何て素晴らしいことでしょう。

古事記に関する本は若い頃からずいぶん読みました。

古事記には日本人の精神的なルーツが表れています。どんな国をつくりたいかという夢や思想が凝縮されているのです。

ただ原書で読むのは大変です。ややこしい名前の神様がたくさん出てきて、そこでまず躓いてしまいます。

ねずさんと語る古事記』は、原文、読み下し文、現代語訳、解説が併記されているところがいいですね。古事記に何が書かれているのか知りたい人は解説文だけ読めばいい。もっと深く知りたい人は、自分の興味次第で他のところも読み進めていけばいいのです。

武士の娘』は長岡藩の家老の家に生まれた鉞子がアメリカに渡り、様々な経験をしながら日本を見つめなおしていく過程が書かれています。

長岡高校の同級生が送ってくれて読んだのですが、自分の状況も重なり、感動もひとしおでした。鉞子さんは、1928年に帰国します。その頃にはご主人は亡くなっていて、老いたお母さまを引き取り、看取ります。一緒に暮らす間に、鉞子さんはお母さまと自分の娘たちが語り合う時間を持って、思いの受け渡しや歴史の引き継ぎを行うのです。日本人の看取りってこういうことなのだと思いました。

今、私は106歳の母と一緒に暮らしています。最期のときまで、できるだけ時間と思い出を共有したいと思っていますが、こうした考えは鉞子さんの影響ですね。

 

アメリカの行動原理を知る

茶の本』は大学時代に何度も読み返した、思い入れの強い一冊です。

この本の原書は英語で書かれていて、その英語がとても美しい。リズムがあって、言葉の意味が分からなくても音読するだけで心に響いてきます。しかも茶の湯について深い理解がある、明治の日本人がこんな美しい英語でこんな素晴らしい本を書いたのだから、自分もへこたれずに頑張ろうと思いました。

あとの本は、歴史の真実について知るのに役立った本です。『全文リットン報告書』は、国際連盟が満洲事変を調査するために送った調査団の報告書が全文掲載されています。読めば、国際社会が日本の主張の大半を認めていたことがわかります。日本人の自信につながる一書です。

極東軍事裁判がアメリカをはじめとする連合国によって仕組まれたものであり、国際法上無効だったということを主張しているのが『パール判事の日本無罪論』です。この本を読んで、件の裁きがいかに国際法から外れたものであったのかを知ってほしいと思います。

今やアメリカという国を知らなければ、ヨーロッパもロシアも中国も中東も理解できません。良きにつけ悪しきにつけ、世界を動かしているアメリカがどういう行動原理で動いているのかということを『アメリカの戦争』は教えてくれます。ここまで残酷なのか、ここまで強引にやるのかと驚きますが、実はフェアな国でもあるのです。

ルーズベルトの責任 日米戦争はなぜ始まったか』はそれを表す一書です。フランクリン・ルーズベルトがいかに巧妙に情報操作をし、その陰謀によって日米戦争を起こしたか。ショッキングな内容のこの本によって、著者のチャールズ・A・ビーアドはアメリカの歴史協会会長の地位を失い、学会を追われ、結局失意のなかで亡くなってしまいますが、こうした本を戦後間もなく刊行することができる知的土壌がアメリカにあったのだということを教えてくれます。(取材・文/緒形圭子)

▼最近読んだ一冊

「漢字は1500年前に中国から伝わりましたが、現代中国の語彙の7割は日本から逆輸入されたものといわれています。日本人が豊かな想像力でどんなに素晴らしい漢字や言葉を創り出したか、この辞書を読むと分かります」
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