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小説家・樋口毅宏『アクシデント・レポート』を試し読み【4】

衝撃の遺書を公開
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気鋭の小説家・樋口毅宏氏が5年もの歳月をかけてこの世に送り出した小説『アクシデント・レポート』。日航ジャンボ機墜落事故、オウム真理教事件、原発・沖縄問題などなど、「日本の何もかも叩き込んだ」(樋口氏談)だけあって、普段小説をあまり読まない方でもドキュメンタリーやノンフィクションを読むような感覚でぐいぐい引き込まれる名作だ。今回は、物語中で発生した飛行機墜落事故の犠牲者の遺書を一部公開。

(第一回目はこちら→http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54021

星雲中学三年生の遺書

†日星あや(15)の遺書(400字)
私って、どうかしている。人とちょっと違ってる。
「変わっている」って自分でも思ってた。うんこを食べたりしないけど。
どすんといってから、たいした時間がたたないうちに、もう助からないんだって、私にはわかってた。
死ぬんだ。よかった。
まわりはみんな泣いている。手を合わせて拝んでいる。このまま落ちてもいいと思っているのは、きっと私だけ。
どうしてみんな、そんなに死ぬのがイヤなんだろう。
私はどうして、死ぬのが怖くないんだろう。
やっぱり変わってる。

今朝、家を出る前に食べたヨーグルトがスカーフについた。
だから飛行機なんか落ちてもいい。

死んだら、永遠の闇があるだけ。
生まれる前は闇だったように、死んだ後も闇が続くだけ。
来世はないし、天国も地獄もない。運命もない。幽霊になることもない。
全部、死んで何もなくなることを恐れた人間が作り上げた、都合のいい妄想。

そろそろ着地の準備。どうせ助からない。
せいせいする。
じゃあね。


†斎藤清二(14)の遺書(259字)
コワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ
どうしてぼくが死ななければならないの
ヒコウキがおちたら、CAをおそおうと思ってた。でもダメ。ちじ(ママ)みあがってる。

日星あやが好きだった。「好き」と言えないまま死ぬのか。日星、かわいいかわいい日星。目を閉じてる。やだやだやだやだ神さま神さま神さま神さま
小川ソミはどこだ。小川さんにも、好きだって言いたかった。
お願いです。かみさま、ほとけさま。ぼくと日星と小川さんだけ助けてください。ほかは死んでもいいから助けてください。いやだいやだいやだいやだいやだいやだ
堂(ママ)貞のまま死にたくない!

昭和、平成、男女、黒幕、政府事故調査委員会、文化芸能、マスコミ、宗教、沖縄、そして原発…。日本の「すべて」が炙り出される警世の書。
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