国家・民族 週刊現代 歴史

人気歴史家・磯田道史が語る、学校では教えない「西郷どん」の魅力

歴史の裏側はこんなにおもしろい
磯田 道史
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古文書はなぜ大切なのか

―本書には、「目を大きく見せるための美容整形術が、昭和初期には東京の丸ビル眼科で行われていた」など、比較的新しい時代の、どこかで話したくなるエピソードも入っています。

医学史の研究は多いのですが、美容整形や、生殖医療についてはあまり盛んではない。

たとえば「勃起」が歴史的に、どのように認識されてきたか。江戸後期の蘭学者・緒方洪庵は脹という言葉を使っています。国学者の平田篤胤は「志都乃石室」で、「男性器に血流が流れ込む」と、海綿体の仕組みを記している。

蘭学から平田国学まで、「勃起」の概念を学術的にたどるのも楽しいものですよ(笑)。

―津波・地震の歴史研究のため静岡文化芸術大学に勤められた縁で、浜松の振興に関わった話も印象的です。浜松は徳川家康が若き日を過ごし、小針売りだった豊臣秀吉も訪ねた土地なんですね。

浜松は自動車やオートバイの生産に支えられた町です。しかし今後、AIや自動運転の時代が来るなか、それらの産業にどこまで伸び代があるのか疑問符がつく。

対して、歴史資産を活かせば、観光産業にはまだまだ活路が見いだせます。

 

現代は、物づくり以上に「物語づくり」が産業に求められている時代。物語を支えるのは自然景観であり歴史的文化財です。

つまり、歴史は未来産業のインフラなのです。

そして、さらにその歴史の礎となるのが、知的古文書や本の文化。こうした経済的な価値から見ても、日本が世界に誇る書籍文化を守っていく意味が大きくなってきていると思うのです。(取材・文/伊藤達也)

『週刊現代』2018年1月20日号より

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