金融・投資・マーケット 人口・少子高齢化 不動産

「2017年はお祭り」だった不動産市場に忍び寄る「お開き」の不安

庶民不在の宴は富裕層と外国人だらけ
牧野 知弘 プロフィール

「負け組」日本人と「勝ち組」外国人

日本の総人口はいよいよ本格的な減少局面を迎えている。2017年1月時点で、前年比約31万人も減った。とりわけ15歳から64歳までの人口を指す「生産年齢人口」は、前年比60万人以上減少している。生産年齢人口は1995年がピークであり、その後は急激に数を減らし、今日までにおよそ20年かけて1000万人以上も減っていることはあまり知られていない。

にもかかわらず、2017年の前半は貸家の着工戸数が急増するという不思議な現象が起こった。その原因は、相続税の計算にあたって相続財産評価額から控除できる基礎控除額が、2015年1月1日から従来の60%に減額されたからだ。

アパート会社や税理士、資金の運用に悩む地域金融機関などが、土地オーナーに対して相続税対策として(土地の相続財産評価額を減額できる)アパートや賃貸マンションの建設を提案し、結果として貸家の着工が急増する現象を引き起こしたのである。

しかし、こうしたマーケットを顧みない貸家建設の横行は、各地で需要とのミスマッチを引き起こし、空室を抱えるアパートオーナーが急増する結果となった。金融庁からの金融機関に対する注意喚起の効果もあり、2017年後半からは対前年同月比で減少に転じたものの、節税だけが目的のこうした不動産投資は今後社会問題に発展する可能性もあり、筆者も危惧するところだ。

 

また、外国人観光客の増加ばかりが話題となった2017年だが、実はインバウンドマネーが本格的に日本の不動産に流れ込み始めた年でもあった。主役は中国、台湾、韓国、香港といったアジア諸国の投資家たちだ。

ニセコでインバウンド投資が進む北海道・ニセコはもはや国内のリゾート地とは思えないほど外国人ばかり、インバウンド投資も進む photo by gettyimages

たとえば、北海道・ニセコで分譲されたコンドミニアムは、分譲価格が坪当たり600万円を超えて売りに出されたが、インバウンドの投資家たちの手によって完売している。これは単なる別荘ではなく、オーナーが利用するとき以外はホテルとして運用するもので、高い利回りが期待できることからインバウンド投資家に人気だ。坪当たり単価が東京・港区内の新築マンション並みであることは驚きをもって伝えられた。

また、長野県白馬村で分譲されたコンドミニアムでも、坪当たり300万円を超える価格で完売するという珍現象が生まれている。日本のこれまでの常識からは考えられない不動産マーケットが、インバウンドマネーによって新たに創られているのである。

2017年の不動産市場は「宴たけなわ」

さてこうして2017年をふり返ってみると、冒頭にも書いたように、日本の不動産は大変な活況を呈していると言えそうだ。が、筆者はいくつかの点で疑問を投げかけておきたい。斜めから見ると、これらの不動産には「庶民の顔」が見えてこない

都心の高層マンションや超高級マンションを購入するのは、一部の富裕層と相続対策が必要な高齢富裕層である。大量の大規模オフィスの建設も、それだけのテナント需要の勃興を計算して建設しているようには思われない。

また、投資ゲームに参戦しているのは潤沢なマネーを抱えたインバウンド投資家であることがわかる。ホテル建築ラッシュも、急増するインバウンドの宿泊需要に呼応するものにすぎない。一般庶民が郊外にマンションを買おうにも価格が高すぎて買えない。そんな現象からは、明日の日本が見えづらい。

世界でもまれに見る、長期にわたる異常な低金利政策に支えられて、一部の企業と投資家たちがくり広げてきたお祭り騒ぎが「宴たけなわ(酣)」を迎えたのが、2017年なのかもしれない。宴はいつか「お開き」になる。有利子負債という据え膳でしこたま腹をふくらませた不動産市場のプレーヤーたちが、宴の終わりに気づくのは意外と遠くない将来なのかもしれない。

人口減少と高齢化を背景に、国のあり方が大きく変わろうとしています。定年までの安定雇用で住宅ローンを返済し、静かな老後生活へ、という人生は、とっくに過去のものとなりました。家を買うのか借りるのか、どこで、どんなふうに暮らすのが幸せなのか。

これからは一人ひとりが新しい時代の「住まい方」を考える時代。現代ビジネス編集部は、特設サイト『住まい方研究所』を開設しました。皆さんが住まい方を考え、選ぶための役に立つ情報を、さまざまな視点からお届けして参ります。