いよいよ始まった上海万博は
「経済オリンピック」だ

経済効果は2500億元

 4月30日夜、上海に乗り込んだ中国の胡錦濤主席は、高らかに上海万博の開会を宣言した。「和諧世界」とは、互いに強調しあう調和の取れた世界という意味だ。「和諧」という言葉は、胡錦濤政権のキーワードで、中国の新幹線(高速鉄道)には、「和諧号」という名前がついている。

 首都・北京でも、連日メディアに「世博会」(上海万博)の3文字が踊らない日はない。

 新聞・雑誌は大特集を組んでいるし、テレビはのべつ幕なしに現場実況中継を流している。開幕前は、朝昼晩の中国中央テレビのニュースの冒頭に、「上海万博の開幕まであと○日となりました」という一言が入っていたが、開幕後もご丁寧に、「上海万博が開幕して○日になりました」という挨拶を入れているほどだ。

 「世博会」と並んでよく登場する単語が、「経済奥林匹克」(経済オリンピック)という6文字である。上海社会科学院の知人が、次のように解説する。

「中国政府にとって今回の上海万博は、2年前の北京オリンピックに次いで、上海で『経済奥林匹克』を開催しているという感覚です。オリンピックを遥かに超える184日間も開催し、7000万人もの観客を動員する。
  その経済効果は、北京オリンピックの3.5倍にあたる2500億元(1元=約13.5円)と算出してます。投資総額が286億元なので、約10倍の経済効果を生むと見ている。まさに上海万博は、1851年のロンドン万博以来、万博史上最大級のイベントなのです」

 この学者によれば、中国政府は、上海万博を経済オリンピックとして見た場合、主に3つの経済効果を狙っているという。

「第一に、開催地・上海の経済効果。上海は、人口は全国の1.4%、1900万人に過ぎませんが、GDPは全国の4.5%あります。今回の万博は、内外から大量の観光客が押し寄せるため、上海の消費を25%程度押し上げるでしょう。昨年からホテルは建設・改修ラッシュが続き、地下鉄もアジア最長の13線、計424㎞分も、急ピッチで開通させました。
  まさに『万博特需』です。もちろん、われわれ上海市民だって万博を観に行きます。上海の各家庭には、上海市政府から、150元の万博入場券が1枚ずつ配られました。『各家庭1枚』というところがミソで、1枚もらえば、あと2枚は自分で買って、一家3人で観に行こうと思うでしょう」

 第二に、上海周辺の「長三角」と呼ばれる地域、及び長江沿岸地域への経済波及効果が期待できるという。

「上海から100㎞圏内に蘇州があり、200㎞圏内に杭州や無錫があり、300㎞圏内に南京や揚州がある。これまで『長三角』16都市は、上海を頂点としてピラミッド式に発展してきました。だが最近は、上海の周辺都市の経済成長が凄まじく、これに万博の特需景気が加わり、『長三角』が、経済的に同水準に近づく可能性があります。これは極めて健全な発展形態と言えます」

 第三は、海外との貿易面での経済効果である。

「7000万人の参観予定者のうち、外国人は5%の350万人に過ぎず、実はそれほど大きなパイではありません。だが、開会中に上海を訪れる国家元首及び副元首級のVIPは、102人を予定しており、こちらは"上客"です。中国はこれらのほとんどの要人と、いわゆる『万博外交』を行います。
  48ヵ国の元首級が訪れる資源の豊富なアフリカ諸国、1月にわが国との関税を撤廃したばかりのASEAN諸国など、各国と結ぶ経済協定は数知れず、経済効果も計り知れない」

 このように、上海は大変な盛り上がりのようで、上海人の鼻息も荒い。

万博に一喜一憂する中国の個人投資家

 だが、約1200㎞離れたこちら北京では、そもそも「万博熱」というものはなく、人々は意外に醒めた目で見ている。私の周囲の10人ほどに上海万博に行くかどうか聞いてみたら、「まあヒマがあればね」という答えが大半だった。

 ある公務員は、「お役所や国有企業などで、『上海万博視察ツアー』と銘打った『公費旅遊』(お遊び出張)が増えそうで、それにあやかって行ければいいなあ」と漏らしていた。

 連休が明けた5月6日、北京の商業の中心地、朝陽区CBD(中央商業地域)にある大手証券会社に足を運ぶと、そこには50人ほどの「個人投資家」が、グッタリと蠢いていた。上海万博に期待して、関連銘柄に投資した人々である。

 この日、「上海万博23銘柄」は、総崩れの状態だった。「上海のホテル王」と呼ばれる錦江投資は、8.11%の下落。デパートの新世界が8.95%の下落。建設大手の上海建工が7.73%の下落。その他、新黄浦が-7.50%、上海新梅が-8.12%、東方明珠が-6.83%、宝鋼が-4.17%など、目も当てられない状況だった。

 「上海地域銘柄」を見ても、全160種中、この日に値上がりした株は、わずか12銘柄しかない。証券会社の電光掲示板が、「上海万博銘柄」や「上海地域銘柄」を映し出すたびに、画面は緑一色(中国の証券ボードは、上昇銘柄は赤色で、下落銘柄は緑色で表示される)になり、「ウォーッ」という怨嗟の嘆声が上がる。

 だが、北京人のたくましいところは、株で大損こいたら、証券会社の入口前に椅子を持ち出し、堂々と座り込んで、「次の勝負」に興じることだ。見知らぬ人同士で卓を囲み、株の損失をその日のうちに、麻雀で取り返そうとするのである。この変わり身の早さも、中国経済発展の一つの原動力である。

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