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奨学金で借金600万…女子大生風俗嬢「その後の現実」

彼女たちの人生はどこで変わったのか

貧困と奨学金問題に深く切り込み話題を呼んだ、中村淳彦著『女子大生風俗嬢』が上梓されたのは2年前だ。当時、親の援助に頼らず奨学金を借りて大学進学を果たしたした彼女たちは、カラダを売って足りない分の学費や生活費を稼いでいた。

あれから彼女たちは、何を思いどんな生き方をしているのだろうか? その後の足跡を追った最新ルポ。

内定を蹴って、AV嬢になった

「入院したのは10月25日。もう1ヵ月以上入院しています。もうボロボロです……どうして、そんなになるまでお酒を飲んじゃったのかわからなくって……」

山田詩織さん(仮名、24歳)は、溜息まじりにこうつぶやく。現在、アルコール依存症で関東近郊の精神病院に入院している彼女。届けをだして許可が下りれば外出ができるとのことなので、病院近くで待ち合わせた。

筆者は2年前、女子大生の貧困を取材した『女子大生風俗嬢』(朝日新書)を出版した。執筆に際して、学費と生活費に追われ、貧困に苦しむ現役女子大生を十数人取材している。

山田さんは、明治学院大学の4年生で、渋谷のデリヘルでアルバイトしながら大学に通っていた。取材当時、すでに就職活動を終えて、広告会社に内定をもらっていた。

「卒業して2年。冷静に振り返ってみれば、メチャクチャな人生でした。

実はあれから内定した会社を蹴って、AV女優になりました。でも、これじゃあいけないと事務職に就いたんですが…そこも半年で辞めた。それからサービス業の店員になったけど、そこも半年で辞めてしまった。今はニートです。それで1ヵ月前から精神病院に入院している。本当になにやっているの、って思います」

簡単な化粧に伸びた髪。大学4年生在学中の華やかな印象はなく、実際以上にいくつも年齢を重ねて疲れているように見えた。

 

山田さんの父親は、彼女が高校在学中にリストラされ、家から娘を大学に進学させるお金の余裕がなくなった。それでも進学を諦めきれなかった彼女の祖父母が初年度納入金だけは準備をしてくれたという。しかし、それ以降、両親はおろか、祖父母からも一切の金銭的な援助なしに大学に通わなければならなかった。

結局、日本学生支援機構からの第二種奨学金を月10万借り、学費に充てた。当時は実家に暮らしていたが、生活費や食費、交通費はアルバイトで稼ぐことにした。

入学してすぐに蕎麦屋でアルバイトをはじめた。授業を優先すると、働ける時間は限られる。時給900円、月3、4万円のアルバイト代だけではお金が足りなかった。大学2年のとき、風俗で働くことを決めた。

2年前の取材時は、就職に前向きだった。奨学金の返済や生活費でお金が足りなければ、「入社後も休日に風俗で働く」と話していた。給与を出来高で支払う性風俗は働く女性の裁量が大きく、働きたい時間に働ける。当時の山田さんにとって、それは違和感のない、かつ合理的なひとつの計画だった。

しかし、その後、どんな心変わりがあったのだろう。内定を蹴ってAV女優になることを決めたきっかけはなんだったのか?

「あの当時を今振り返ると、明確にやりたい仕事がなかった。大学1、2年生の頃は漠然と海外で働きたいと思っていて、夏休みに留学しました。風俗はじめたのは、留学にどうしても行きたかったのがキッカケ。でも、わからなくなっちゃった。

お金を稼いでいくなかで、途中から夜の世界で働くことが、第一の目的になっちゃった。自分の中で大学生と夜の仕事が両立できていなかった」

父親がリストラされた高校時代から風俗嬢になる大学2年生まで、山田さんは友達と一緒にランチをしたり、遊びに行ったりできなかった。お金がないので、お洒落もできない。年に二度ある学費の納入が常に心の重荷となり、劣等感を抱えながらお金の心配ばかりしていた。

山田さんは童顔で胸が大きく容姿に恵まれている。留学に行きたい一心で衝動的に風俗店に応募し採用後に覚悟を決めた。緊張しながら出勤し何人かの男性客にサービスをしたら、蕎麦屋で働く1ヵ月分のバイト代をわずか1日で稼いでしまった。「すごい仕事を見つけた」と思った。

その後すぐに月40万円~70万円も稼げるようになった。お金があることで、裕福な家庭で育った大学の友達とも対等に遊びにいけるようになり、堰が切れたように欲しいモノを買った。学費が払えない、という重荷からも解放された。本当にいい仕事を見つけた、と思っていた。

山田さんはこう話す。

「カラダを売る自分はダメな人間だ、という感覚はなかった。ただ、夜の世界で仕事をしたことが、自分の中ですべてになってしまった。夜の仕事をしたことで大学に通えたし、留学にも行けた。お金がないっていう精神的な苦痛もなくなった。

風俗が自分にとって、単なるお金を稼ぐための手段という以上の存在になってしまって、自分が将来やりたいことを叶えていくための一時的な拠り所って方向には向かなかった。

夜の世界が私の居場所になった。夜の私のことは、昼に会う人は知らないけど、そこで頑張って働いてお金を稼いでいるっていうプライドと本音があって、そこにしがみついてしまった。そんな感じがする」

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