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医療・健康・食 週刊現代

最新治療「カーティー療法」で人類がガンを克服する日

医療はここまで進歩している

かつては不治の病といわれていたがんも、医療の発展で少しずつ治る確率が増えてきた。だが依然として、肉体的にも経済的にも負担が大きいのががん治療だ。そんな現状が、'18年から大きく変わっていく。

血液1滴でがんがわかる

英キングス・カレッジ・ロンドンで腫瘍学を専門とするファージン・ファーザーネー教授は'18年、ある革新的な実験を試みる予定で、世界から注目を集めている。

「いまイギリスの民間企業と合同で、『がんを殺す』細胞の培養実験を進めています。その細胞とは『ニュートロフィル細胞(好中球)』と呼ばれるもので、人間の体内に存在し、細菌感染すると真っ先に攻撃を開始する免疫機能のひとつです。

がんを克服した『がんサバイバー』の人たちは免疫力がほかの人よりも高く、その人たちからニュートロフィル細胞を抽出し、増殖させてがん患者に注入します。他の免疫細胞を使った治療と同様に、副作用が少ないのが特徴です。

マウスの実験では24時間でがん細胞の95%を壊滅させる結果が出ています。'18年あたりから、5年生存率が非常に低い膵臓がんの患者に治験を行う予定です」(ファーザーネー教授)

 

技術革新が進んでいるのは、がん治療だけではない。できる限り早期に発見するための検査も、より効率的なものが誕生している。

「'17年8月、国立がん研究センターが血液1滴から13種類のがんを診断する技術を開発し、臨床研究をはじめました。

現在も腫瘍マーカーによる血液がん検査は行われていますが、それよりも発見率が高く、ごく初期のがんも発見可能。簡単に早期発見できるようになれば、患者の負担が肉体的にも経済的にも軽くなります」(医療ジャーナリストの松井宏夫氏)

国立がん研の開発チームが注目したのは、がんが血液中に分泌する「マイクロRNA」と呼ばれる物質だ。がんは種類によって、それぞれ特有のマイクロRNAを分泌する。

そしてその量の変化で13種類のがんを95%の確率で発見できるようになった。

「将来的には分泌量の分析をAIで機械学習させれば、99%以上の精度でがんの種類を判別できるようになるでしょう。

費用は2万円程度と決して法外な金額ではないので、企業の健康診断の項目に血液がん検査が当たり前のように入る時代が来るかもしれません」(前出・松井氏)

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次から次へと新しいがん治療が発表されるなかで、ここ30年、いや50年の現代医学の技術の結晶ともいうべき革命的な治療法がついに世に出た。

「'17年8月、ノバルティス社が開発したがん治療薬『キムリア』がFDA(米食品医薬品局)の承認を受けました。この薬は『カーティー(CAR-T)細胞』と呼ばれるヒトの免疫細胞を使った新しいタイプの治療薬です。

体内の免疫細胞のひとつに『T細胞』があり、この細胞が活動するとがん細胞の増殖が弱まります。

このT細胞を体内から取り出し、がん細胞と結合すると活性化するように遺伝子操作を人工的に加える。するとT細胞はカーティー細胞に変化し、高い抵抗力を持った免疫細胞になります。これを薬品化したものがキムリアです」(KDDI総合研究所の小林雅一氏)

現在は若年性の白血病など血液のがんに有効な治療法として実用化されているが、'18年以降、カーティー療法は前立腺がんや膀胱がんなど、ほかの種類のがんにも応用されることになる。

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