格差・貧困 医療・健康・食 現代新書

日本を「命の格差を軽視する国」にしないために言っておきたいこと

メディアと社会への要請
近藤 尚己 プロフィール
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たとえば、昨今広く普及しているユーザー等による「格付け」や「評価」のシステムが応用できないだろうか。ショッピングサイトや民泊アプリ、グルメ情報サイトなどによく見られる、事業者とユーザーとが互いに評価・格付けし合う仕組みである。

記事を読者や専門家が評価するサービスは既に存在する。たとえば、公衆衛生の専門家(公衆衛生修士や同等の肩書を持つ人)のコメントと評価スコア付きで健康記事が読める「ヘルスナッジ」というサービスがある。

健康情報サイト全体を「格付け」するようなサービスもぜひ欲しい。オンラインショッピングサイトでいえば、「出品者評価」に相当する。ひどい記事を書けば低評価が否応なく「見える化」してしまうため、メディア各社やその記者はおのずと意識を高め、学び、良記事が増えると期待される。

また、読者側も★をつけるなど、格付けにゲーム感覚で参加できるようにすることで、健康情報のリテラシーが無理なく向上するかもしれない。

一度大手新聞社にこのアイデアを提示して相談したが「評価される側が一社で対応するには荷が重すぎる」といった趣旨で断られた。業界各社が連携して独立した体制をつくる、といった工夫が必要かもしれない。

これらのアイデアは、冒頭で紹介した新書にも登場する、健康格差対策のための行動科学戦略を応用したものである。個人の健康づくにしろ、組織の社会的行動にしろ、それをしやすい環境やしくみを整えることで無理なく改善していくことができるだろう。

自分たちで守る

最後になるが、「健康は自分で守るもの」という意見を私は全く否定しない。ただし、少し修正するならば、「健康は自分たちで守るもの」である。

長野県が行ってきたような、地域ぐるみで、互いに協力し合い、「おいてけぼり」を作らない健康な社会づくりを、今まさに全国規模で一丸となって進めよう、ということだ。そのために何ができるかを、政府、組織、企業、メディア、そして市民一人ひとりが考えてほしい。

昨今の「健康格差」に関する報道や書籍がそのきっかけとなることを期待している。

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