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医療・健康・食 生命科学 週刊現代

来年、ノーベル賞を獲るのは「この日本人学者たち」だ!

実は選ばれるためのコツがある

末期がん患者を救った研究

「ノーベル賞ですか?そういう話は意識せず、目の前の課題に一生懸命に取り組むだけです」

こう語る京都大学教授の森和俊氏は、ノーベル医学・生理学賞受賞に大きな期待がかかっている。

医学・生理学賞は、京大iPS細胞研究所の山中伸弥氏が'12年に受賞して以来、北里大学特別栄誉教授の大村智氏('15年)、東京工業大学栄誉教授の大隅良典氏('16年)と受賞が続き、日本の「お家芸」になりつつある。

受賞が見込まれる有力候補は何人もいるが、森氏はその最右翼。専門は分子生物学で、体がタンパク質を制御するメカニズムを研究している。

「細胞のなかで作られるタンパク質は、様々な生命現象によって、異常な形で形成されてしまうことがあります。しかし、人間の体はそれを修復する力を持っている。私は、その仕組みを研究しています」(森氏)

この研究は、がんやパーキンソン病の治療につながり、「人類のための貢献」を理念に掲げるノーベル賞にふさわしい。

もちろん有力候補は森氏だけではない。社会に偉大な貢献をなした研究者の名前が挙がる。

「本庶佑さん(京大名誉教授)も受賞の有力な候補です」と語るのは、サイエンスライターの緑慎也氏だ。

「本庶さんらは、免疫系の司令塔である『T細胞』の表面にある『PD-1』という分子を発見しました。これは言うなれば免疫系の『ブレーキ役』。がん細胞は、このブレーキを踏み免疫の攻撃を受けずに済んでいることが明らかになりました。

'14年にこの研究成果から生まれたのが、話題を集めたがん治療薬『オプジーボ』です。末期のがんにも効く場合があり、その貢献は非常に大きいものです」(前出・緑氏)

同じく「薬」での貢献が評価されている、熊本大学大学院教授の満屋裕明氏も受賞の可能性が高い。サイエンスライターの佐藤健太郎氏が言う。

「満屋博士は、エイズが死病として世界を揺るがしていた'80年代、初のエイズ治療薬『AZT』を開発しました。

製薬会社がこの薬に高値をつけて、なかなか患者の元に届かないと見るや、第2、第3の薬を開発し、購入可能な価格で提供しました。その後も発展途上国へ薬を届ける仕組みづくりを行っています」

 

「究極の時計」を開発した東京大学工学部教授の香取秀俊氏は、物理学賞の超有力候補だ。前出の緑氏が解説する。

「香取さんは、300億年に1秒もズレない『光格子時計』を発明したことで知られています。

これまで『世界標準時計』として使われていた『セシウム原子時計』の誤差が1億年に1秒でしたからそのすごさがわかります。光格子時計が標準時計に採用される日も近い。

光格子時計は、わずかな時間のズレを検出することもできます。アインシュタインの相対性理論では、重力が異なる場所では時間の進み方が違うとされています。

本当は飛行機に乗っている人と地上にいる人でも違うのですが、これまではそれを計る手段がなかった。しかし、それを検出することができるのです」

この時計は、様々な実用化の可能性を秘めてもいる。緑氏が続ける。

「筆頭は地震予知です。地震は、発生前に地殻変動を起こし、そのことで重力が変わる。それによるわずかな時間の進み方の変化を光格子時計で検出すれば、地震を予知することも可能なのです。いままさに、研究が進んでいる最中です」

ノーベル賞では、「市場」をつくることができたかどうかも評価のポイントになる。

「'14年、赤崎勇さん(名城大学終身教授)らが、青色発光ダイオードの研究を評価され、物理学賞を受賞。青色LEDのような巨大市場をつくる研究は、評価対象になるとされます。

その点、化学賞で有力なのは、リチウムイオン二次電池の基本原理を打ち立てた旭化成名誉フェローの吉野彰さんです」(前出・緑氏)

Photo by GettyImages 青色発光ダイオードの研究が評価された赤崎勇(名城大学終身教授)

「リチウム電池」は充電しようとすると発火するという欠点があったが、吉野氏は'80年代にその難点を克服したリチウムイオン二次電池の原型を試作。

その後、元ソニーの西美緒氏らが初めて商品化に成功した。この電池はノートパソコンやスマートフォンに搭載され、市場規模は2兆円とも言われる。

今後はドローンや電気自動車のバッテリーにも用いられ、さらに市場を拡大する見込みだ。それが受賞を後押しするのは間違いない。