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規制緩和・政策 メディア・マスコミ

呆れるほど稚拙な、メディアの「電波を巡るネガティブ報道」

既得権益を手放したくない一心で…
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「先送り」報道は誤解

11月29日、政府の規制改革推進会議は放送に使用される電波の利用権について、「価格競争の要素」を導入するよう安倍首相に求めた。

放送や通信に利用できる電波の周波数帯域には限りがある。そのため、日本の電波の利用権は総務省が管理し、新規企業が利用を申請した場合、その事業内容などから電波の使用を許可するかどうかを審査する。これを電波割当制度という。

複数の企業からの申請があった場合、審査だけではなくオークション形式で決めたほうが、競争原理が高まってよいのではないか、というのが今回の提案である。その結果、政府は閣議決定で電波オークションをするための法案を検討し、平成30年度中に法案提出することを決めた。

ところが報道を見ると「電波オークションは先送り」という、まるで逆の見出しが並んでいる。その理由は、報道のソースになっている規制改革推進会議の答申文が独自の「官庁文学」で書かれ、それをメディアが誤解した結果によるものである。

改めて規制改革推進会議の答申を読むと、「価格競り上げオークションは継続検討する」が、「そのほかの方式は法案提出」となっている。わかりにくい文面だが要約すると、ネットオークションなどで一般的に認知されている、入札が増えるごとに金額が上がる形式での競売は行わないが、それ以外の方式については法案が提出されるということだ。

たとえば出品者があらかじめ値段を設定し、出品者自身が徐々に値段を落としていって入札を待つのもひとつの「オークション」である。そうした形式での電波オークションがこれから検討されていくことになる。

戦々恐々の放送業界

ちなみに電波利用権のオークションは世界各国で行われていて、先進国で導入していないのは日本だけ。先進国の導入事例をみると、「価格競り上げオークション」は稀で「そのほかの方式のオークション」が一般的だ。

オークション導入へのネガティブな報道が目立つのは、やはりテレビや新聞、ラジオといったメディアが「電波権益」の傘の下にいるからだろう。政府が法案提出を決めたにもかかわらず「先送り」と解釈して報道するのは、少し都合がよすぎるのではないだろうか。

 

既存メディアがかたくなに既得権益を守ろうとする一方で、今後電波の利用権に価値はなくなるのではないかとする向きもある。You Tubeやインターネットテレビ局が人気を集める時代、電波放送に参入したい企業は減るのではないか、というわけだ。

実際のところ、いまだに電波に価値があるかどうかはオークションをやってみないとわからない。少なくとも新規参入しようとする企業は電波に価値があると思って入札をするわけで、彼らが既存メディアに対抗できるだけのビジネスができれば、その価値がさらに証明されることになる。

今の放送業界が払っている電波利用料は全体で年間60億円程度。メディアでは100億円単位のビジネスが簡単に動くことを考えれば安い金額だ。

これがまかり通っているのはいまのメディアが既得権益を享受していることの裏返しだし、だからこそオークションという形式を導入することに社会的価値があることは間違いない。

『週刊現代』2017年12月30日号より

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