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どうしても「港区女子」になりたかった女の子の金銭事情

A子とB美の複雑な感情【15】

元日本経済新聞記者にして元AV女優の作家・鈴木涼美さんが、現代社会を生きる女性たちのありとあらゆる対立構造を、「Aサイド」「Bサイド」の前後編で浮き彫りにしていく本連載。今回は、第8試合「港区女子」対決のBサイド。

今回のヒロインは千葉出身の女子大生。彼女のインスタグラムを覗くと、「港区女子」を体現したような投稿ばかり。だけど現実は……。

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芝浦や新橋は「港区」に該当しないらしい

ネーミングって本当に素晴らしくて、私がリアルタイムで経験しただけでも、「援助交際なんていうやんわりとした言葉でごまかすからどんどんカジュアル化するのだ、売春と言え売春と」と言っていた人たちが、「パパ活なんていうおしゃれな言葉でごまかすからどんどんカジュアル化するのだ、援交と言え援交と」と言っている。日本語の豊かさに惚れ惚れとするし、紡がれていく逞しさに心強くなる。

で、最近のヒットネーミングといえば港区女子・港区おじさんかなと思う。何が素晴らしいって港区というただの地名を冠しただけで、それの意味するところの8割がたが伝わるのがすごい。

まぁ港区といっても広いわけで、当然この港区の意味するところは芝浦や新橋ではない。麻布十番、六本木、西麻布、青山その辺りであって、なんなら本来は港区ではない恵比寿や銀座が次点として入り、イメージアイテムとしてはシャンパン、ブランド品、外車、タクシー代、高い店、といったところか。

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要するに、玄人女子と素人女子の間にいて、彼氏・男友達とパパ・スポンサーの間の男の人たちと、恋愛・遊びと売春・商売の間のようなことをしている女の子たちのことだ。キャバ嬢とソーシャライトの間。本人たちの収入や資産が特別高いわけではないのに、なんか豪華なものや豪華な生活に不自由してないっぽい女子たち。なんの仕事をしているかよくわからないが聞いてみればただの女子大生やOLであることも。

そういった属性に当てはまる女の子たちは、別に港区を冠したネーミングが登場する前も存在し、クラブのVIPルームや西麻布のバーに巣食っていた。「素人のおねえちゃん」と呼ばれた玄人と素人の間のおねえちゃんたちだったこともある。

ただ、キャッチーな言葉の圧倒的な効果として、現在その最中にない者、蚊帳の外にいる者の幻想を過剰に膨らますことがある。

 

そして厄介なことに、時代はSNS大爆発で、雑誌やテレビよりもとてもリアルで、とても身近に見える情報が簡単に収集できる。もちろんそれらは虚構だらけの加工まみれの作られた現実なのだが、SNSで過剰に膨らんだ現実が、言葉に過剰に幻想を抱く者たちの夢と呼応し、実体のない目標を作り上げることもある。