不正・事件・犯罪

世田谷5億円詐取事件・追い詰められた地面師たちの「卑劣な言い分」

世田谷地面師事件の真相②
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名うての地面師、北田明こと北田文明をはじめ、配下の「東亜エージェンシー」社長松田隆文や同社の大塚洋、「プリエ」社長の茅島ヒデトこと熊谷秀人ら4人が、町田警察署の捜査員に逮捕・勾留されたのは、今年12月4日から5日にかけてのことだ。

かつてNTT寮だった世田谷区の土地建物の売買を装い、買い手の東京都内の不動産業者、津波幸次郎(仮名)から5億円を詐取したという不動産詐欺である。

犯行日は、2年半前の2015年5月27日にさかのぼる。その手口のあらましは前回も簡単に紹介したが、今回は被害者の証言を中心に、事件をより詳細に再現し、地面師グループの手口をレポートする。

(第一回【大物地面師が暗躍した「世田谷5億円詐取事件」の真相】はこちらからhttp://gendai.ismedia.jp/articles/-/53739)

犯行グループ最初の仕掛け

被害者の津波は北田らの口車に乗せられ、27日になって売買取引の場所に指定されたY銀行の町田支店とM銀行の学芸大駅前支店の二カ所に、会社の社員と司法書士を派遣した。

なぜ銀行も支店も異なる別々の場所で取引をおこなうのか、という津波の疑問に対し、北田は土地の持ち主の取引口座がM銀行しかないこと、さらに持ち主の自宅から町田が遠いという理由で学芸大駅前の支店にしたのだ、と言い繕う。これに対し、むろん津波側も妙だとは思ったが、取引の直前になってそう伝えられたため、了承せざるを得なかった。

これが、犯行グループの最初の仕掛けだ。津波はY銀行の町田支店にベテラン司法書士と担当課長を配し、M銀行の学芸大駅前支店には司法書士事務所の若手職員を向かわせた。

 

当初、津波が持ちかけられた取引は、持ち主から東亜社が元NTT寮を買い、改めて東亜社が津波に転売するという形だった。津波の社員がY銀行町田支店で売買代金の5億円を引き出し、仲介者である東亜社がそれを受け取ってM銀行学芸大駅前支店に送金して持ち主の口座に入金するという段取りだ。

そこに、地面師グループの北田たちはもう一つトリックを用意した。それが「プリエ」の熊谷の介入である。

見せ金29億円

取引当日の朝になると、北田たちは「プリエの熊谷が持ち主から物件を買う窓口となる」と言い出し、送金について「津波→東亜→プリエ→持ち主」という取引になったと話した。これは登場人物を増やすことによって、犯行の発覚を遅らせるという詐欺師の常套手段でもあるのだが、津波側はここでも突然の条件変更を呑まざるを得なかった。

前回書いたように、さらにその際、津波たちは持ち主が元NTT寮のほかに仙台の山林を売りたがっているという話も、取引当日になって聞かされた。北田や松田からは、「仙台の土地取引は本件とは関係ないので、5億円さえ払えば元NTT寮の物件を買える」との説明を受けたので、それも応じた。

これは、犯行グループが元NTT寮と仙台の山林をセットで売りたいという持ち主の要望に応えるためでもあるが、その裏で、窓口になるプリエに、それだけの資金力があるかのように見せかける工作もしていた。

津波がその手口を明かした。

「あとでわかったのですけど、持ち主に対しては、プリエは『すぐにでも仙台の山林と世田谷の建物(元NTT寮)を一括で買える資金がある』と説明していたのです。プリエの銀行口座にある29億円の残高を見せ、『だから安心してください』と。ところが実は、その29億円は北田が小切手を使って入金したもの。使えない見せ金だったんです」

小切手や手形を駆使したこうした見せ金もまた、詐欺師の得意の手口だ。経営難に陥っている会社を見つけてきて、そこに手形を振り出させる。巷間、その手形は〝ポン手〟〝クズ小切手〟と呼ばれ、手形交換所に回すと不渡り確実なので、現金として引き出すことができないのだが、形の上ではその分の預金が積み上がったことになる。

ところが津波側の司法書士でさえ、そのプリエの預金残高を見せられて信用したようだ。

会社の資産状況を示す証拠としては、銀行に現預金の残高証明書を発行してもらうのがふつうだ。が、それだとクズ小切手による入金工作がばれてしまう。そこで北田は、通帳や残高証明ではなく、ATMの伝票を持ち主や津波側の司法書士に見せ、信用させたのである。

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