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防衛・安全保障 AI

中国人民解放軍が進める「AI軍事革命」は北のミサイルより恐ろしい

元自衛隊最高幹部が解説
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アメリカ・中国両国による近未来の戦争の可能性をリアルに描いて話題となっている『米中戦争』。中華人民共和国・人民解放軍の実力はいかほどなのか。様々な情報や見方が氾濫する中、元自衛隊最高幹部だった著者・渡部悦和氏が警戒するのが「AI兵器」だ。実は、中国はAIに関する論文数ですでに米国を上回っている。莫大な予算をAI研究に投下し、アメリカを猛追している「脅威」を、渡部悦和氏が緊急レポート。

中国人民解放軍の「AI軍事革命」とは

AI(人工知能)が目覚ましい勢いで進化しているが、中国の人民解放軍は、AIを軍事のあらゆる分野に取り込み、軍事分野における革命である「AI軍事革命」を達成しようとしている。

人民解放軍に関する米国人研究者であるエルサ・カニア(Elsa B. Kania)は、人民解放軍の「AI軍事革命」に関する注目すべき論文「戦場のシンギュラリティ」(1)を発表した。

シンギュラリティは技術的特異点と訳されることが多いが、人によって定義が違う。

例えば、AIが人間の知性を超えること、AIが自らAIを生み出すことによって知能爆発が起きること、AIの発達によりあらゆる分野において抜本的な変化が起こることを意味する。

(1)Elsa B. Kania, “Battlefield Singularity”, Center for a New American Security

カニアは、人民解放軍が注目する「戦場で起こるであろうシンギュラリティ」に焦点を当てて、自らの論文を「戦場のシンギュラリティ」と表現したが、センスのあるタイトルだ。

この論文の注目点は以下の4点だ。

①中国は、AIを将来の最重要技術と位置づけ、「2030年までにAIで世界をリードする」という目標を達成しようとしている。

②習近平主席が重視する「軍民融合」により、民間のAI技術を軍事転用し、「AIによる軍事革命」を実現しようとしている。

③「AIによる軍事革命」の特徴の一つは、AIと無人機システム(ロボット、無人飛行機、無人水上・水中船など)の合体であり、この革命により戦争の様相は激変する。

④「AIによる戦場における完全な無人化」の追求には倫理的問題などのリスクもあり、人間とAIの関係は今後の大きな課題である。

中国は既に米国に次ぐAI先進国

現在、米国が民間部門のAI開発の進展により、AI分野における世界のリーダーになっているが、中国が米国を猛追している状況だ。

中国指導部は、AIを将来の最優先技術に指定し、2017年7月に「新世代のAI開発計画」を発表したが、その中で「中国は、2030年までにAIで世界をリードする」という野心的な目標を設定している。

そして、最先端のAI研究に大規模な予算を投入し、その目標を達成しようとしている。

中国は、すでにAI先進国であり、AIに関する論文数では米国を上回り、AIの特許出願数において米国に次ぐ第2位である。

数のみではなく質の面でも中国は米国を猛追していて、「AI発展のための委員会(旧称 アメリカ人工知能学会)」が主催したコンテストにおいて、中国の「顔認証」ベンチャー企業が第1位になっている。

中国は、多額のAI予算の投入、アクセスできるビッグデータの存在、最も優秀な人材を集め教育する能力などにより、AI分野で米国を追い越す勢いであり、米国は手強いライバルと対峙することになる。

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