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インターネットが自由を奪う?〈タダ〉の代償を払うのは誰だ…

こじらせ起業家の「告発」の読み方
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シリコンバレー、受難の年

2017年の暮れもそろそろ押し迫ってきた。

これまでも何度か取り上げてきたことだが、振り返れば今年2017年はシリコンバレーにとって、逆風が吹き荒れた年だった。そのせいか、これまでと違って、ITやハイテクの世界で、これは!と目を見張るような出来事も見当たらなかった。

それもこれも昨年2016年の大統領選で共和党のトランプ大統領が誕生し、それまで民主党が進めてきた、ITやハイテクによるイノベーションが無条件に推奨されるような、楽観的な雰囲気がすっかり払拭されてしまったせいだった。

実際、2017年11月には、昨年の大統領選でフェイク・ニュースを撒き散らしたという嫌疑で、Google、Facebook、Twitter が連邦議会の公聴会に召喚され、「ソーシャルメディア」としての責任を問われていた。

時を同じくして “net neutrality(ネット中立性)”の原則(ルール)を外すという方針が、FCC(連邦通信委員会)から発表された。

ネット中立性は、インターネット上に流れる情報を、たとえば音声や映像などの用途別に区別してはならず等しく一律に扱うべきというルールだったのだが、これを共和党が多数派になったFCCで廃止する方針が示された。ネット中立性は、IT関連での起業の促進剤の一つとみなされていたものだった。結局12月14日、FCCは5人の委員による票決の結果、3対2でネット中立ルールの撤廃を可決した。

これで、2016年末に発表されたAT&TによるTime Warnerの買収がすんなり認められていれば、トランプ政権における情報通信政策の原則は(民主党に反対を唱える)従来の共和党の方針をなぞったものだと理解すればよいだけの、簡単なことだったはずなのだが、しかしこの買収には、反トラスト法(日本の独禁法に相当)当局である司法省から「不承認」の方針が示された。

つまりトランプ政権は、(新興のIT業界ではなく)旧来の大企業である通信業界の味方だという単純な立場を取っているわけでもないようなのだ。

もともとネット中立性ルールの廃止は、実際にインターネットの情報を流す物理的ケーブル(いわゆる「土管」)を設置する通信インフラ業界から望まれていた。ルールを廃して、たとえばインターネットの利用量に応じて課金することで設備投資の回収を速やかに行うことを目的にしていたといわれる。

そこから、ネット中立性ルールの廃止は通信業界に利することを選択した結果であると理解されていたわけだが、そのような単純な話ではないらしい。

このように目下のところ、先行きの不透明感は増すばかりで、シリコンバレーの受難は当面、このまま続きそうだ。

 

IT企業による「生態系破壊」

その受難の諸相を理解するのに役立ちそうなのが、アンドリュー・キーンの『インターネットは自由を奪う』である。

原題は“The Internet is not the answer”であり、つまりは、インターネットは何ら現代社会の抱える問題のソリューションを与えるものではないと断じている。

インターネットは自由を奪う

だが、ここで彼が言う「インターネット」とは、正確には Google や Facebook などシリコンバレーのIT企業群が事実上占拠した後のインターネットのことである。

邦訳タイトルの通り、彼らこそが「インターネットの自由を奪う」存在である。その限りで、口さがないほどGoogleたちに対する悪態に満ちた本が本書である。

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