北朝鮮

北朝鮮の対米戦費に関する、元経済ヤクザのある考察

なぜ彼らは大国相手に戦えるのか
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私事で恐縮だが、11月初頭に渋谷区代官山町に引っ越した。環境が変われば視点も変わるが、そのことで繁華街の「ある変化」が視界に入ってきた。

その変化を感じていた直後の同月29日、北朝鮮は新型ICBM「火星15」の発射実験を行った。これをニュースで知った時、私は「なるほど」とうなずいてしまった。

北朝鮮製ロケットから高く立ち上る噴射炎を眺めた時、脳裏をよぎったのは、アフガニスタンのケシ畑で見聞したことの数々だ。都内の「ある変化」と「ミサイル実験」が連なる、地下経済のネコノミクスモデルを発表しよう。

【PHOTO】iStock

「赤いライオン」と「赤い虎」

北朝鮮は11月29日に、アメリカ全土を核攻撃可能と主張する新型ICMB「火星15」の発射実験を成功させた。北朝鮮のような社会主義独裁国家で、ロケットの発射実験にかかる費用を算出するのは難しいが、00年には当時の金正日総書記が、訪朝した韓国メディアに「ロケット1基を発射するのに、総計2~3億ドルかかる」と明かしたことが報じられている。

一般的にもこのサイズのミサイルの打ち上げにかかる費用は3億ドル(約340億円)と試算されていることから、概ね正しい金額と言えるだろう。北朝鮮は次々とロケットの開発を行っているのだから、その金額は莫大なものだ。

そこで誰しもが思うのは、北朝鮮はどこからその金を得ているのかという点だ。

 

代官山に引っ越したことで渋谷駅に出る機会が増えた私だが、ある変化が起きていることに気付いた。もちろん一般の人が気付くことはない変化だ。それは、浄化作戦などでしばらく姿を消していた外国人系のプッシャー(違法薬物の密売人)が復活していた、ということだ。

日本がバブル景気に沸いていた頃に来日したイラン人労働者が、バブル崩壊によって職を失い、薬物密売組織を作り、00年代から全国の繁華街を中心に暗躍した。その後、相次ぐ集中摘発によって組織は壊滅状態となり、不思議なことに都内では密売のホットスポットだった場所に「ケバブ屋」が林立するようになった。

当時、イラン人プッシャーが扱っていた覚せい剤は北朝鮮製だった。北朝鮮製の薬物はパッケージが特徴的で、向かい合う2匹の赤いライオンがプリントされたものがヘロイン。右前足を上げた赤い虎のイラストは覚醒剤だった。クスリは1キロ単位で取引され、「赤いライオン」=ヘロインはロシア、ヨーロッパ、オーストラリアへ。「赤い虎」=覚醒剤はおもに日本向けの商品だった。

しかし、06年10月に北朝鮮が地下核実験に成功したことを受けて、日本政府は北朝鮮の全船舶を入港禁止とした。この時期に日本の覚せい剤の価格が急騰したことから、北朝鮮船舶と覚醒剤密輸の関連が疑われていたわけだが、たしかにそれ以来、赤いライオンと虎の話を日本で聞くことはなくなった。

一方のイランについては、核開発問題を巡ってアメリカを中心に経済制裁が行われた。このことで、イランは原油の輸出が減少し、核開発のための材料や設備を入手することが困難になった。『元経済ヤクザだからわかる、北朝鮮「過剰な挑発」の真意』で書いたように、北朝鮮も相次ぐ経済制裁でドルが不足していて、喉から手が出る程「油」が欲しい。

かつては麻薬を仲立ちにした蜜月関係だった両国が、「麻薬とオイル」を通貨として、黒い貿易を始めていたら……。

ミサイル発射の頻度に比例して、東京の街中にプッシャーが増えるようであれば、そこには並々ならぬ関係がある、とみるのが、地下経済を知る者からすれば自然なのだ。

現在、北朝鮮はアメリカと核ミサイルを仲立ちにしたチキン・レースならぬ「マッドマン・レース」の真っ最中だ。はたして麻薬は超大国を相手にする巨大な戦費となりうるのか――アフガニスタンを例に解説したい。

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