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週刊現代

旅行エッセイスト・宮田珠己が、自由への旅を求めるワケ

「求めていたのはこれや!」

少年時代からずっと自由に憧れていた

小学校5年生のとき、夏休みに横須賀に住んでいる曾祖母の家に遊びに行って、初めてテレビで人形劇『新八犬伝』を見ました。

何ておもしろいんや! 伏姫を中心に、八つの珠を持つ八犬士が悪党や怨霊と闘うスペクタクルにすっかりはまってしまい、番組が終わったときは寂しくて寂しくて。

「新八犬伝ロス」に陥った私は小説が出るとすぐに買ってもらったのですが、読んでも寂しさはおさまらない。とにかく終わってほしくなくて、自分で続きを書き始めました。そしたら楽しくなってきて、「『新八犬伝』みたいな小説を書く人になるぞ」という気になり、以降私の将来の夢は「小説家」になりました。

私は兵庫生まれの大阪育ちです。家はごく普通のサラリーマン家庭で、特に束縛されていたわけではないのですが、何故かずっと、自由に憧れていました。小学生の頃から国内旅行のガイドブックを買っては、旅行のシミュレーションをする変な子供だったのです。

3位の『地底世界ペルシダー』は旅への憧れがさらに強まった中学時代に読んだ一冊です。

主人公のデヴィッド・イネスは地面を掘る機械の試運転中に地球内部の世界に迷い込んでしまうのですが、そこは進化した翼竜(中生代に初めて空を飛んだ爬虫類)が原始人類を支配する世界だったというSF小説。

ストーリーの面白さもさることながら、巻頭に掲載されていた地底世界の地図が魅力でした。細かく描かれた山、平原、湖などを見ながら自分が地底世界を旅する姿を想像して楽しみました。

NHK特集の「シルクロード」が始まったのは、1980年、私が高校生のときでした。海外旅行なんて行けるわけがないと思っていたので外国にはあまり興味がなかったんですけど、「シルクロード」を見て、国境も時代も超えた悠久の世界にめちゃめちゃ惹かれました。

 

番組を再構成した『写真集シルクロード』シリーズはA4判の大型本。発売当時一冊3200円と高額で、高校生の私には到底手が出ず、「欲しい欲しい」と呪文のように唱えていたら、親が折れて、全巻6冊をまとめて買ってくれました。

1巻に万里の長城の最西端の城楼の写真が載っています。大学生になった私はアルバイトでお金をためてシルクロード旅行を決行し、実際にこの城楼を訪れました。酒泉の駅からレンタサイクルで向かったのですが、その途中で感じた解放感は未だに忘れられません。「求めていたのはこれや!」と叫びたい気分でした。

何も起きないなのに、面白い

哀愁の町に霧が降るのだ』は大学時代に読みました。内容は自伝的小説なのですが、構成がめちゃくちゃ。「書けない」話が3章も続いたと思ったら、途中に「なかがき」が入ったり、小説なのに旅行記になったり。その自由さに感動しましたね。何でもありなんや、って勇気をもらいました。

卒業後就職したのですが、思い切り旅行がしたくて10年で会社を辞めました。その後、アジア地域をあちこち旅して、旅行記を出す機会にも恵まれ、2冊目までは順調でした。ところが、3冊目にして早くもネタがなくなってしまった!

出版社と約束しているのに書けなくて、「書けへん、書けへん、どうしよう」とノイローゼになっていた時期に出会ったのが、『第一阿房列車』です。

事件なんて何も起きない。用事もない。ただ汽車に乗って大阪に行って、酒を飲んでるだけ。なのに、面白い。内田百閒って天才や、と思いましたね。この本を参考に『ウはウミウシのウ シュノーケル偏愛旅行記』を書いて、私は危機から脱出することができたのです。

新生・ブルーバックス誕生!