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企業・経営 週刊現代

トヨタ「前代未聞の役員人事」全舞台裏

69歳の相談役が副社長に就任
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社外からの抜擢、子飼いの更迭、朝令暮改の組織改編……。まさに異例尽くしの大規模人事を断行した豊田章男社長の真の狙いとは。トヨタを長年取材し続けるジャーナリストによる全内幕レポート。

滋賀大卒の「破壊屋」を登用

「こんな衝撃的な人事は見たことがない」「あり得ない人事だ」。グループ企業の役員や幹部たちがこう口を揃えるのが、トヨタ自動車が11月28日に発表した2018年1月1日付の役員人事だ。

トヨタでは役員人事は4月1日付で行うのが通例だが、これまでに経験したことがないスピードで経営環境が変化していることに対応するためとして、役員人事を一気に3ヵ月前倒しした。人事を発表するにあたって豊田章男社長(61歳)が出したコメントにその危機感が表れている。

〈 自動車業界は100年に一度の大変革の時代に入った。次の100年も自動車メーカーがモビリティ社会の主役を張れる保障はどこにもない。『勝つか負けるか』ではなく、まさに『生きるか死ぬか』という瀬戸際の戦いが始まっている 〉――。

実際、トヨタを取り巻く経営環境は厳しい。世界の2大自動車市場である中国と米国では環境規制が強まり、電気自動車(EV)シフトが加速。

トヨタがそのEV戦略で出遅れる中、ITの雄グーグルやウーバー・テクノロジーズが自動運転、ライドシェア事業へ参入するなど、自動車ビジネスでは本格的な「異次元競争」が拡大している。

強くて巨大な恐竜が気候の変化に対応できずに絶滅したのと同様に、世界で約40万人の社員を抱え、日本企業の「稼ぎ頭」であるトヨタですらも生き残れる保証はない。

 

今回の役員人事で最も衝撃をもって受けとめられているのが、69歳の小林耕士・現相談役が副社長に就く人事だ。

小林氏は滋賀大卒業後の1972年にトヨタに入社し、主に財務部門などを経験。同世代からは「破壊屋」「アイデアマン」などと呼ばれ、歯に衣着せぬ言動で周囲を圧倒する仕事ぶりで知られる。トヨタで部長経験後にデンソーに転じて役員に就き、'15年からはデンソー副会長の要職にあった。

そんな小林氏をめぐっては、まず今年4月にデンソー副会長を務めながらトヨタ本体の相談役に就任する異例の人事が敢行され、関係者に驚きが広がった経緯がある。

トヨタで役員未経験者が相談役に就くことはなかったうえ、相談役は原則として本体の副社長経験者以上が就くポスト。現在は社長・会長を経験した奥田碩氏、張富士夫氏らが就いている。

その小林氏が副社長に登用されたのだから、まさに異例中の異例の人事。トヨタの副社長は65歳を目途に後進に道を譲るケースが多く、小林氏はその「副社長定年」をとっくに超えている。小林氏は相談役就任後、筆者にこうも語っていた。

「俺も歳だから最後のご奉公としてあと1~2年頑張る」

それなのに、火中の栗を拾うかのごとく副社長に就き、財務を統括するCFOとCRO(チーフ・リスク・オフィサー)を担当する。

トヨタでは賃金や部品代金の支払いなど1ヵ月に必要な資金量はグローバルで1兆円近いと言われ、CFOの仕事は言うなれば「トヨタ銀行頭取」。小林氏はそんな重責を担うわけだ。

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