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韓国

なぜ韓国は「核ミサイル危機」でも同盟関係を潰してしまうのか

専門家の仮説と分析

ひたすら混乱を増しただけの7ヵ月

2017年5月10日に文在寅政権がスタートした。7ヵ月が経過して、この政権が率いる韓国は、まったくの内憂外患の状況で身動きが取れなくなっているといっても過言ではない。

国内的には、過去10年間、国を統治した、2つの政権の中枢部の人々を司法で裁く「積弊清算」政策の中で、ほぼ毎日、前政権の主要人士の拘束適否審がニュースのトップを飾っている。

また、最低賃金や法人税の引き上げが政権の優先事項になっており、企業は悲鳴を上げている。

さらに、米政権が北朝鮮との戦争を口にする状況下にもかかわらず、国家情報院(元中央情報部)の直近の3名の院長が拘束された。その組織は、国内公安機能をなくすなど、大幅減縮され、名称が「対外安保情報院」に変わる。

対外的には、「コリア・パッシング」(Korea passing)という和製英語に集約されるように、韓国の運命を自主的に決められないことへの危機感があふれている。

韓国人が好んで「同族」という表現を使う北朝鮮は、核保有国の地位を確定したかのように振舞い韓国を対等な相手として扱おうとしない。

 

長い歴史を通して朝鮮半島の運命を左右し続けてきた中国は、米国との「大国関係」のやりとりに関心が集中している。その流れの中で、米国が韓国内にTHAADというミサイル防衛システムを導入したことを口実に、韓国の経済界に圧力を加え、韓国外交当局の公式発表を正面から否定することさえ躊躇しない。

形式的には同盟という関係をもつ米国と韓国の政権は、主な事案ごとに異なる内容の合意を発表している。日韓関係は、全ての試合が終わった野球界のオフ・シーズンのようなものになりつつある。

なぜこういう状況が繰り広がるのか。偶然の出来事が重なったせいなのか、それとも国家の経営を委託された政権が選択した行動の結果が複合したものなのか。その答えは後者であるという仮説で議論してみる。

文政権が追求する「正義」の中身

正義という言葉には聞く人を委縮させる力がある。誰でも完璧な正義を実現することができないからである。

1948年に成立した大韓民国の歴代大統領の中で、文在寅ほど、正義という抽象的価値を政権の原動力までのギア・チェインジした大統領はいないであろう。就任から100日を迎えた8月17日、文大統領は記者会見でつぎのように言った。

「新しい政府は、昨年の冬のロウソク広場から生まれた。国民の国、正義たる大韓民国を作りたいという国民の希望、これが文在寅政権の出発点である…(去る100日間は)国家運営の流れを変え、国民が要求する改革課題を実践してきた」

「国民の国、正義たる大韓民国」というモットーを任期5年間の「国家ビジョン」と宣言した文大統領は、7月19日には、それを実践するための具体的目標として、「100大国政課題」を発表した。その真っ先に挙げた4つの課題が、文政権の基本的指向を伺わせている。

「国民主権のロウソク民主主義」というサブタイトルをつけた4つの課題は、以下のようなものだ。

1)積弊の徹底的で完全な清算
2)反腐敗改革による清廉な韓国の実現
3)国民の目線に合う歴史問題解決
4) 表現の自由と言論の独立性

この4つの項目のみを国名を伏せて見せれば、人によっては、どこかの後進国で、腐敗した独裁政権から政権を勝ち取った政治集団の、「革命公約」の如く思うかもしれない。

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