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「日経平均3万円越え」の楽観論に感じる、一抹の不安

デフレ脱却は進行中のようだが…

企業のデフレ観は払拭されていない

2017年7-9月期の実質GDP成長率の2次速報値は、前期比年率換算で2.5%と、1次速報値の同1.4%から上方修正された。この「2.5%」という数字は、日本経済の成長率としてはまずまずの結果であった。

上方修正の理由は、1次速報では前期比で+0.2%の小幅上昇であった民間設備投資が、同+1.1%と大幅に上方修正されたことによるものである(年率換算だと+4.3%)。

筆者は、今後の日本経済の鍵は設備投資の回復であると考えていた。そして今回の設備投資の回復は、依然として日本でデフレ脱却プロセスが進行中であることを示唆しているものであり、とりあえずはホッとしたところである。

ただし、民間設備投資の拡大はようやく再開したばかりで、「4%」程度の伸び率ではまだまだ不十分である。特に、法人企業の「フリーキャッシュフロー(ここでは、税引き後利益と減価償却費の合計値から設備投資を控除したもの)」に注目すると、全規模全産業で大幅に増加している。この点は、不十分な設備投資を象徴する現象であると考える(図表1)。

「フリーキャッシュフロー」が増加しているということは、多くの企業が減価償却を下回る設備投資しか実施していないこと、すなわち、日本国内の設備や店舗などの「資本ストック」が減少を続けていることを意味している。

そして企業が資本ストックを減らしているということは、多くの企業が、いまだに、国内の事業環境は今後も収縮し続けていくと考えていることを意味している。つまり、企業のデフレ観は払拭されていない、という解釈になる。

 

すなわち、デフレ脱却が実現するためには、この「フリーキャッシュフロー」が、少なくとも減少に転じる必要がある(理想的にはマイナスにならなければ外部資金調達ニーズは発生してこない)。現状では、これがまだ実現していないということになる。

さらにいえば、長期金利は、債券市場で市場関係者が勝手に決めているわけではなく、マクロ経済上の資金需給(「貯蓄投資バランス」と言い換えてもよい)で決まっているが、企業のフリーキャッシュフローが増え続けている状況では、トレンドが上昇に転じる可能性はきわめて低い(図表2)。

企業のフリーキャッシュフローがプラスの場合、企業は「ストック」としても現金や預貯金を蓄積しているケースがほとんどなので、設備投資などの投資需要を満たそうとする場合には、まずは、企業の現預金の取り崩しが行われる(その過程でフリーキャッシュフローは減少し、やがてマイナスに転じるはずであ)。

銀行貸出などの外部資金調達ニーズはこの現預金残高がデフレ以前の水準まで下がってから初めて発生すると考えられる。

従って、長期金利の上昇と銀行貸出の回復は、企業のデフレ観の払拭如何で決まってくるものであって、現局面で日銀がマイナス金利政策を解除しても、実現しない。

一時的なショックによる変動は別として、トレンドとして、貸出ニーズは高まってこないし、長期金利も上昇しないだろう。むしろ、デフレ脱却の道半ばにして金融政策が「引き締め方向に転換する」というリスクが顕在化した場合には、ますますフリーキャッシュフローは拡大し、長期金利にもさらに低下圧力がかかるのではないかと考える。

現在の金融政策の枠組みでは、長期金利の低下を止めるすべはない。そうすると、マイナス金利政策を解除すれば、金融機関の体力がますます低下する事態にも繋がりかねない。

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