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中国とインド「嫌い合う二大国」が本気でケンカしない理由

なんだかんだで…

中国とインド――。いうまでもなく世界1、2位の人口大国だが、両国はこれまでしばしば小競り合いを演じてきた。1962年には局地的とはいえ、国境紛争に端を発した戦争状態に突入した経緯もある。

カシミール地方やヒマラヤ東部などではいまだに未画定の国境を抱えている。貿易摩擦や中国製通信機器へのスパイウェア搭載疑惑などもあり、友好・平和がなかなか長続きしない印象がある。

今年6~8月には「国民総幸福」のキャッチフレーズで知られる小王国ブータンと中国との係争地ドクラム高原(中国名ドンラン)を巡り、中国・インド両軍が2カ月半にわたって百数十メートルの距離でにらみ合うという緊迫の事態となった。

このように、外交・政治から経済までさまざまな対立要因を抱える両国だが、いずれも決定的な衝突には至っていない。なぜか。

お互いに本気ではケンカできない事情があるからだ。

実は限りなくゼロ

インドと中国はしばしば「ライバル」として取り上げられるが、経済発展では中国がはるかに先を行き、国内総生産(GDP)ではインドの約5倍の規模だ。

工業力の差も大きく、近年は産業資材や生活用品、玩具、繊維製品に至るまで大量の中国製品がインドに流入し、インドの貿易赤字が問題化している。インド政府が発動するセーフガードやアンチダンピング措置は、その大半が中国を対象としていることはよく知られている。

 

中国はインドとチベット地方の国境線を認めていないばかりか、チベット文化圏に属するインド側アルナチャル・プラデシュ州の一部についてしばしば領有権を主張してきた。

中国側は認めていないが、2013-14年には中国軍がラダック地方の国境線を超えてインド側に侵犯する騒ぎも起きた。インド軍が中国との国境地帯に10万人近い兵力を張り付けているのも中国の脅威があるからに他ならない。

何よりも、インドにとって中国は、過去3回にわたって戦火を交えた隣国パキスタンを全面支援しているやや不愉快な相手だ。習近平国家主席肝いりの中国・パキスタン経済回廊(CPEC)は、中国がパキスタンの道路や鉄道、発電所などのインフラに総額500億ドル以上の投資しようというもので、一部はすでに動き始めている。

このCPEC最大のプロジェクトといえるパキスタン南西部のグワダル港開発では、すでに大規模なコンテナターミナルが稼働しているが、インド側は中国が将来これを海軍基地としても利用するのではないか、と警戒している。

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インドも「対抗措置」を取っている。インド政府は中国から逃れたダライ・ラマ14世率いるチベット亡命政府を国内に受け入れており、中国はチベット人活動家の動向に神経をとがらせる。

このように紛争の種が絶えない両国だが、将来的に印中が軍事衝突を起こす可能性は、実は限りなくゼロであるといえる。

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