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東大教授が「赤ちゃんが選んだ」と本当に言える絵本をつくってみた

大人の見方と真逆だった!?

「赤ちゃんが選んだ本」って本当?

何年か前、書店に並んでいる絵本の帯に「赤ちゃんが選んだ本」と書かれているのを見つけたことがある。そのとき、私はなんとも言えない違和感を感じた。

その絵本は、本当に赤ちゃんが選んだのか?

絵本と言えば、まだしっかりと文字を読むことができない小さな子どもを対象にしたものが一般的である。

したがって、絵本は大人と小さな子どもが一緒に読む(見る)ことが多い。特に、赤ちゃん向けの絵本に関しては、親が一緒に読んであげることが想定されている。絵本の読み聞かせは、語彙獲得を後押しするなど教育的価値が高い。

しかし、ここでは絵本の教育的側面ではなく、子ども向けの絵本が創られ、出版され、流通するまでのプロセスの話を中心にしたい。

ちなみに、私は中学校時代あまり勉強せずとも、まぁまぁ成績は良かったつもりでいたが、美術の成績だけは恥ずかしくて言えたものではない。つまり、私は絵本を描いたり評価したりするセンスを持ちあわせていないことをあらかじめお断りしておく。

あまたある絵本の中で定番と呼ばれるものは、長い間売れ続け、中には世代を跨ぐロングセラーもある。私自身が、子どもの頃、目にした絵本がいまだに売られていたりもする。

多少の変化はあるもののAmazonの絵本ランキングトップ20位には、常に10年以上前に出版された絵本がランクインしており、半数近くを占めているときもある。驚異的な息の長さだ。

〔PHOTO〕iStock

「大人の自己満」も含まれている?

さて、定番絵本となるには、どうすれば良いのか?

日本国内だけでも、毎年数百冊もの絵本が新たに出版されている現状を考えると、未来の子どもたちに見てもらえるような定番絵本に名乗りをあげることの困難さは言うまでもない。

さらに、定番が長いあいだ居座っているがゆえ、新作絵本がそれなりに売れるだけでも一筋縄ではいかないだろう。

長期にわたって読まれている絵本には何か秘密があるのだろうか? 子どもに受けそうな可愛らしい絵やシンプルなストーリーなど様々な要因が考えられる。

しかし、重要なポイントを忘れてはならない。

 

実際に絵本を買うのはお財布をにぎっている「大人」である。絵本作家がどんなに子どもの「気持ち」になって絵本を創ったとしても、実際に購入する大人のお眼鏡にかなわなければ、意味がない。

この視点は、絵本作家を目指している人や既に絵本作家を生業としている人にとって、理解しているのとそうでないのとで人生の大きな分かれ目となるであろう。

もちろん、少し大きくなって大人と一緒に書店にいけるようになれば、陳列されている絵本に対する子どもの反応を観察しつつ大人が購入することは可能である。

しかし、まだ小さな赤ちゃんに選ばせて購入することは難しい。世代を超えて長く売れている絵本の背景には、自分が子ども時代に慣れ親しんだ絵本を自分の子どもにも見てもらいたいという「大人の自己満」があるのかもしれない。

定番の絵本の中には、50歳を過ぎた私がみても、あり得ないぐらい古くさいデザインの絵本が含まれていることを考えれば、祖父母や親戚が古き良き時代を思い出して購入している可能性もある。

(念のため言っておくと、古いデザインの絵本がよくないと言っているのではない。古めかしい絵本でも子どものこころを掴む何かがあるかも知れない)

こうした現状を打破し、赤ちゃんサイドに立って、絵本を制作することはできないものか?