金融・投資・マーケット 現代新書

元マルサが明かす「国税は、ビットコイン投資を狙っている」

仮想通貨による脱税を許すまじ
上田 二郎 プロフィール
このエントリーをはてなブックマークに追加

すでに法改正はできている

国税庁は2017年9月、これまで所得税法上の分類が明確でなかったビットコインをはじめとする仮想通貨の利益は「雑所得」にあたるとの見解を示した。上場株式や公社債などの金融資産との損益通算を認めず、他の所得と合わせて(総合課税)累進税率(5~45%)を適用する。

仮想通貨の急速な市場拡大に巨額の利益を手にした個人投資家も多く、税務上の取り扱いを明確にして課税漏れを防ぐ狙いなのだ。

雑所得は損失が生じても他の所得との損益通算を認めないばかりか、翌年以降に繰り越すことを認めない。つまり、黒字になった年だけに税金をかけるため、納税者には極めて不利になる。国税は投資環境が整っていないと判断したのだろう。

投資に損得はつきもので、3年間程度をならして課税するのは当然なのだが、損失の繰り越しを認めないのは、国税が仮想通貨の把握に苦慮している証拠だ。もし、数種類の仮想通貨を持つ者が損失のある部分だけを申告してきても、チェックできない。また、仮想通貨を資産フライトの手段に使えば税務調査で暴き出すことは難しい。

マルサ時代の仲間が「次々にやっかいなものを作ってくれる」と顔を曇らして私に嘆くのももっともである。

実は、FXも2012年まで雑所得として課税されていた。パソコン1台で世界中と取引ができるが、秘匿性が高く、国税はFXの把握に長いこと頭を悩ませてきた。

それを解明したのはマルサだ。強制調査で次々と脱税者に切り込み、2009年に店頭FX事業者に対して法定調書(税務署に提出が義務付けられている資料)の提出を義務づけた(「初物のFX」の内偵調査に興味のある方は、拙著『国税局査察部24時』(講談社現代新書)をご一読いただきたい)。

損失を繰り越すことができないと納税者は極めて不利になる

マルサはすでに仮想通貨を捉えるための法改正を終えている

財務省と国税庁は2017年の税制改正で、国税犯則取締法(国犯法)を68年ぶりに改正し、査察官が電子メールなど電子データを押収できるようにした。

改正によって、査察官が自宅や会社のパソコンを差し押さえた上で、ターゲットの同意がなくてもデータを調査する権限を持たせた。

また、クラウドなどネットワークに保存されている電子メールや会計帳簿なども、開示要請して収集できるようにし、海外で行われた脱税に対応するための布石を打った。これらは仮想通貨の解明を視野に入れた改正なのだろう。

マルサの力を侮ってはいけない。ひとたび脱税の端緒をつかめば、販売業者を強制調査できる。そうなれば、販売業者から購入者が暴かれ、正しい申告をしていない者は一網打尽になる。

そのために国税通則法を改正し、仮想通貨の税務上の取り扱いを明らかにしたと考えれば、合点がゆく。

記事をツイート 記事をシェア 記事をブックマーク