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選挙 政局 ドイツ

ドイツの有権者をイラつかせる「大連立」協議のすったもんだ

透けて見えるのは「権力闘争」ばかり

再選挙か、大連立か

11月19日に、ドイツ次期政権樹立のための連立交渉が決裂したことは、すでに書いた(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53607)。

決裂したのは、①姉妹党であるCDU/CSU(キリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟)、②FDP(自民党)、③緑の党による連立。そこでメルケル氏は今、改めて新しい連立の組み合わせを考えなければならなくなった。

とはいえ、第3党であるAfD(ドイツのための選択肢)と、第5党である左派党が、それぞれ極右、極左と位置付けられて阻害されているため、メルケル首相には選り好みしている余裕はない。残されたオプションは3つだ。

1)これまでと同じくSPD(社民党)との大連立
2)緑の党と連立して少数派与党となる
3)選挙のやり直し

2)の少数派与党による組閣には反対意見が強い。ドイツ国内はもとより、EUでも重要事項が目白押しだというのに、少数派与党では決定権が極度に弱まる。おそらく時間が倍かかるか、あるいは、決まらないということになるだろう。

これでは強いドイツは維持できない。ドイツは強くなければいけないという点だけは、多くのドイツ人の一致した思いだ。だから、少数派与党はダメというわけ。

一方、選挙のやり直しは、CDU/CSUもSPDも嫌っている。今、選挙をしても、彼らが票を大幅に伸ばす見通しはなく、伸びるのはAfDだけではないかと言われている。彼らにとっては最も好ましくないシナリオだ。

大統領のシュタインマイヤー氏も、選出された政党には組閣の努力をする義務があるなどと言って再選挙には反対しており、11月30日には、大統領官邸にCDU党首であるメルケル氏、CSU党首のゼーホーファー氏、そしてSPD党首のシュルツ氏の三者を呼んで、大連立に向かって努力するようハッパをかけた。

メディアはメディアで、再選挙にはお金がかかるなどとほのめかし、国民がそちらの方向に走らないようブレーキをかけている模様。ドイツの大手メディアは一貫して、AfDを蛇蝎のごとく忌み嫌っている。

すると、現実として残るのは大連立である。

 

緑の党が政権に入るくらいなら

第1党と第2党の連立なので、一応「大」連立と銘打っているものの、CDUもSPDもCSUも、大きく票を失った9月の総選挙の衝撃から立ち直っていない。どこも内部はかなりガタガタしており、CSUでは、党首ゼーホーファー氏の州知事降板がそそくさと決まった(党首としてはしばらく続投)し、他の2党でも何らかの下克上の可能性は完全には払拭できない。

SPDのシュルツ党首の座はかなり危なそうだし、あえて言うなら、メルケル首相の党内での支持もこれまでほど万全ではない。現在は、党の求心力を失わないよう、どちらもかろうじて団結を装っているが、内部で荒波がうねっていることは隠せない。だから、仮に大連立ができたとしても、交渉能力のある強い政権になれるという保証はまるでない。

実際、SPD内部は、政権を安定させることがドイツへの貢献であるとする大連立賛成派と、これ以上メルケルの軍門にくだるべきではないとする大連立反対派に明確に分かれている。そもそもSPDのシュルツ党首は9月24日の選挙後すぐ、次期は下野すると宣言してしまっており、現在、状況が変わったとはいえ、それをすぐに翻しては信用を失う懸念も大きいのだろう。

SPDの中のかなり大きな勢力である青年部も、大連立には絶対反対している。血気盛んな若者たちは、これ以上、メルケル氏の下で骨抜きにされることはやめて、野党として堂々と存在感を示し、次の選挙で首相の座を勝ち取ろうという元気な考えだ。