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「熟成肉」が美味いとは限らない、牛肉の「不都合な真実」

本物と出会うために知っておきたいこと
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あなたは普段、本当に美味しい牛肉を食べていますか?
「A5=美味しい」ではないことをご存じですか?
腐敗に近づいた肉を熟成肉と称する店もあることをご存じですか?

このたび『炎の牛肉教室!』を上梓した農畜産物流通コンサルタントの山本謙治さんに、牛肉の真実を語って頂きます。

日本の牛肉は混乱状態

いま、日本に空前の牛肉ブームが訪れている。

ここ数年、飲食店業界では「肉バル」などに代表されるような、骨付きステーキを前面に押し出す店が激増し、全国各地では「肉フェス」なるイベントが大勢の人を集めている。テレビのグルメ番組でも、肉汁したたるステーキや焼き肉を頬張るシーンがよく流され、雑誌の牛肉特集もいやというほど目につくようになった。

だがしかし、そんな牛肉ブームにもかかわらず、私たち日本人は牛肉のことをあまりに識らなすぎる。僕がそう口にすると、「えっ!? そんなことないよ、識ってるよ!」と言う人も多いかもしれない。

でも例えば、皆さんがふだん食べている牛肉は、なんという牛の品種かご存じだろうか? 「松阪牛」や「飛騨牛」といった、いわゆるブランド名ではなくて、「和牛」や「国産牛」、はたまた「アメリカ産」や「オーストラリア産」と書かれたパッケージに入っている牛肉の品種のことだ。

牛にも当然いろいろな品種があるのだが、それをしっかりわかって食べている人は多くないはずだ。「神戸牛」や「米沢牛」などブランド和牛の名前はよく耳にしていても、では「そのブランド牛の特徴は?」と聞かれた途端に、困る人も多いのではないだろうか。

牛肉の「美味しさ」についてはどうだろう?

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焼き肉店に行けば、「A5の和牛」「最上級の黒毛和牛」というようなキャッチフレーズで、高級な肉が提供される。多くの人が、A5という評価を獲得した牛肉は文句なしに美味しいものと思っているはずだ。

しかし実際には、A5という規格は美味しさを保証するものではない。牛肉を専門とする流通業者の口から、「自分が食べるとしたら、A5の牛肉は選ばない」という言葉をこれまで何度聞いてきただろうか。

このような「混乱」が日本で生じているのは、美味しさとは別のところで、その善し悪しや価格が決められてしまう状況にあるからだ。要するに、いまこの国の牛肉は、混乱期に置かれているのである。

 

格付けは、美味しさの評価ではない

A5という規格について、ここで少し話を深めておきたい。

「A5ランクの牛肉」といえば、テレビや雑誌のグルメ特集で牛肉に関するものがあれば、必ずといってよいほど出てくる言葉だ。もともとは赤い肉の断面が、細かな霜降りが入ったために白っぽいピンク色になっている映像や写真がよく登場する。

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焼き肉やすき焼きで調理したそんな肉を口に運び、「軟らかい、とろける~!」「脂が甘くて、香りがいい!!」というように、じつに美味しそうに食べる人が大半なので、「A5の牛肉=美味しいもの」と信じている人も多いだろう。

しかし、A5という言葉は、美味しさを表す格付けではない、と言うとどう思われるだろうか?

「そんなはずはないだろう、最上級の牛肉だと聞いているぞ!」

そのとおり。A5が日本の牛肉の格付けにおいて最上級であることは正しい。

「最上級なのであれば、それは美味しいということだろう!?」

いや、残念ながらそこが違うのだ。「格付けで最上級=美味しい」ということにはなっていない。それを理解すると、いろんなことが見えてくる。

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