経済・財政

現金至上主義者はこれからの時代「社会悪」となるかもしれない

おカネの未来に関する話をしよう
三戸 政和 プロフィール

現金決済の損失は1兆円超…?

一方、タクシー会社の日本交通が電子決済の端末をリニューアルし、「現金不要」モデルを作ったが、これも大きなブーイングを浴びることとなった。東京近郊の人たちにしかわからないと思うので、少し説明をしておこう。

スマホが当たり前となっている昨今、タクシーでは、電子決済がないタクシーには乗らないという人が出てくるくらい、顧客の選別は進んでいる。実際、現金やカード決済に比べると、電子決済は10秒ほど支払い時間を短縮できる。タクシー利用者は一刻をも惜しむような人が多いので、これは大きな差だ。

タクシーの電子決済は、端末のうえにスマホをかざすだけで終わる。モノの一瞬である。読者の多くは、「数十秒のことを気にして、なにを生き急いでいるのか」と思うに違いない。しかし、実はこの「数十秒のイノベーション」が社会を進化させていくということに気づかなければならない。

実際に、日本の活動人口1億人が、1日に5回の買い物(決済)をして、そのすべてで10秒の差が生まれたらどうだろう。日本全体で1日に50億秒の違いが生じることになる。時間に直すと、実に140万時間の差だ。この時間を、時給1500円で計算したら、20億円のロスになる。支払う人も、受け取る人も、同じ時間を無駄にするので、「倍率ドン」で40億円のロスだ。365日なら、年間1兆4600億円もの経済損失を生んでいるのである。

 

日本交通はこうした即決済需要に対応するために、「origami」という決済サービスを導入した。タクシー内にあるテレビ画面のQRコードをスマホアプリで読み取れば、到着と同時に決済されている、というものだ。

心意気やよし。しかし、新決済サービスと同時期くらいに導入されはじめたこの決済端末、QRコードを使わない場合には、従来通りスマホの電子決済となるのだが、この新しい決済端末の反応ががくぜんとするほど遅いのだ。端末にスマホをかざして、3秒以上待たないと読み取りエラーになり、結果、現金決済やカード決済と時間が変わらない、という本末転倒を招いていることには、頭を抱えてしまう。

カードは怖いという勘違い

決済のスピードは早い方がいいのに、どうして日本ではこうも進化が遅いのか。

そもそも日本人には「カード恐怖症」が多い。カードはスキミングされたら怖いとか、紛失した時に個人情報が流出して怖いとか、勝手に被害妄想をかきたてながら積極的に利用しない人がいる。

しかし、スキミングされて被害にあえば、カード会社が補填してくれるから、ほんとうは、まったくの無傷なのである。一方、現金を盗まればなんの補填もない。落として返ってくる割合は単純計算で、約44%(警視庁が管轄する東京都では、遺失額82億円で拾得額36億円/平成28年)しかない。どちらが危険かはサルでもわかる。

また、個人情報の流出が怖いという人は、カードよりもインターネット、SNSの使用を真っ先にやめるべきだ。