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東急田園都市線の人身事故が減った「ある理由」

「街エコ」の立場から考察する
安達 誠司 プロフィール

まずデフレを止めよ!

以上のことは、ここまでのアベノミクスが、少なくとも国民生活を安定化の方向へと導いてきたことを「街角エコノミスト」の立場から示す好例ではないかと考える。

ただし、これまでは国民生活を安定化の方向へ導いたからといって、今後もそうなるとは限らない。例えば、沿線住民にはかなりの金融機関関係者が住んでいると思われるが、金融機関では、AIなどの技術進歩によって、今後、省力化が急激に進むと考えられる。

先日も、メガバンクが長期的な方針ながら大量の雇用削減計画を発表した。いわゆる「フィンテック」の進歩は「べき乗」に近いペースで進んでいるため、場合によっては省力化のペースもそれにあわせて加速していかざるを得ない状況も想定しておくべきだろう。

他の業種でも同様のことが加速度的に起こるとすれば、大量の失業者が発生することになりかねない。

 

「AIが人間の雇用を奪うか否か」については様々な議論がある。かつては、「AIは人間の職種のほとんどを奪うかもしれない」という議論が主流であったが、最近では、かつての産業革命での事例を参考に、AIの進展と補完的な新たな職業が生まれ、失業者はその新たな職業の担い手として吸収されるため、結果として大量失業は発生しない、という議論も出てきた。

どちらが正しいのかはまだわからないが、日本の場合、AIが従来の人間の職業を奪う「閾値」に到達する前にデフレを解消していないと、補完的な新しい職業は生まれにくいのではなかろうか。その意味で、日本では、AIによる技術革新とデフレ脱却が「競争状態」にある。

AIと人間が共存する新たな世界では、ありうるべき税制や社会保障、もしくは公的部門のあり方も、現時点で想定しているものとは大きく異なる可能性もある。従って、現局面では、財政再建を焦るよりも「まずデフレを止めよ」ということを最優先すべきではないだろうか。

だが、残念ながら、どうも、政策当局は、そうは考えていないようなので、来年は注意すべき年になるのではないかと危惧している。