社会保障・雇用・労働 メディア・マスコミ 家族

保育園が子どもの「攻撃性」を減少させるという驚きの研究結果

恵まれない家庭の子どもに効果アリ
山口 慎太郎 プロフィール

子どもの多動性傾向については、3歳半の子どもが以下の5項目に当てはまるかどうかを利用した。

・落ち着きがない
・飽きっぽい
・人の話を最後まで聞かない
・公共の場で騒ぐことがある
・遊具で遊ぶときに順番を守れない

これらの5項目は、アメリカ精神医学会が作成した注意欠陥・多動性障害(ADHD)の診断基準に完全に準拠しているわけではないが、かなり似通っているため、我々の研究では多動性傾向の指標に利用している。

多動性傾向を抱えていると、学校生活を上手く送ることができず将来の進学・就職において困ることが増える。

ADHDの原因は脳の前頭野部分の機能異常とされているが、遺伝的要因とともに発育期の環境的要因も相互に影響を及ぼすと考えられている。

したがって、保育園通いにともなって子どもの発育環境が変化すると、多動性傾向の強さにも影響が及ぶ可能性がある。

 

子どもの攻撃性傾向については、以下の3つの項目に当てはまるかどうかを元に指標を作成している。

・おもちゃや絵本を壊すことがある
・人に乱暴することがある
・気が短い

攻撃性傾向はADHDと共通性が高く、両方を同時に抱える子どもも多いが、両者は別個の問題行動として捉える小児科医が多いため、我々の研究でもそれぞれについて分析を行った。

言語発達の重要性については誰もが気にかけるところであるが、実は多動性・攻撃性傾向こそがより注目すべき重要な発達指標である。

これは幼少期の多動性・攻撃性傾向は青年期・成人期のそれらと相関しており、将来の犯罪への関与など問題行動の予測に役立つことが知られている。

とりわけ幼少期に行動面が改善された場合には、その効果が成人してからも持続するという研究報告がされている。

一方、言語発達を含む認知能力を上げるような教育プログラムは短期において効果を発揮することはあっても、数年でその効果が消えてしまうことがほとんどであるようだ。

これは勉強の先取りをすればその直後は他の子どもたちよりも優れた成績を上げるかもしれないが、やがて追いつかれてしまうためである。

図1:幼少期に見られる子どもの発達の差(注:すべての指標は平均0、標準偏差1になるように正規化してある)

これらの発達指標の平均値を母親の学歴別に見てみよう。母親の学歴は、父親の学歴や職業、家計収入などと強く相関しているため家庭の社会経済的状況を知る上で役に立つ代理指標とみなせる。

一般的な傾向として、母親の学歴が低いほど社会経済的に恵まれていない家庭である。父親ではなく母親に注目するのは、母親のほうが子どもとの関係が近いためだ。

図1から明らかな通り、母親の学歴が高いと言語発達が早く、多動性・攻撃性傾向は低い。2〜3歳の時点で、すでに子どもの発達に違いが表れているというのは興味深いことだ。

新メディア「現代新書」OPEN!