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「ビットコインバブルだ!」と大騒ぎする人に言っておきたいこと

ナンセンスな論争はもうやめよう
加谷 珪一 プロフィール

時価総額で見てみると

もし主要国の金融資産の0.1%がビットコインに置き換わった場合、どうなるだろうか。

日本の金融資産は約1800兆円、米国は8600兆円、ユーロ圏は2600兆円、中国は推定で2200兆円なので、各国を合わせると約1.5京円(京は兆の1万倍)になる。さらにこれ以外の地域も加える必要があるので、全世界では2京円程度の金融資産があると推定される。

2京円の0.1%は20兆円なので、ビットコインの時価総額は20兆円まで増えてもおかしくないとの解釈が成立する。現在のビットコインの時価総額は約20兆円なので、ちょうど今の価格と一致する。

歴史を振り返ると、1600年代にオランダで発生したチューリップ・バブルを皮切りに、数多くのバブルが発生し、そして崩壊してきた。

だが一方で「バブルだ!」「説明不能」と批判されながらも、結局はその価格が正当化されたケースもたくさんある(バブルの崩壊は大きな被害をもたらすので長きにわたって語り継がれることになるが、バブルがバブルでなくなったケースは損した人がいないので、ほとんど語り継がれないという特徴がある)。

1920年代、自動車の普及が始まったことで米国の自動車メーカーであるGM(ゼネラル・モーターズ)の株価は200倍に高騰した。当時はまったく説明不能な株価であり、投機的な株価の動きに対してかなりの批判が寄せられたが、今のGMをバブルだと指摘する人は誰もいない。

トヨタも国内で自動車が急速に普及した1960年代には、株価が約70倍に高騰している。その後、トヨタの株価はさらに上昇して現在に至っているが、トヨタ株がバブルなのかは考えるまでもないだろう。

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今は未知数だが…

つい最近も同じような現象が観察されている。パソコン向け半導体では圧倒的なシェアを持つインテルの株価は約100倍に高騰した。ITバブルと言われた2000年前後、インテルの株価は説明不能とされたが、その後インテルの株価はそれほど下落していない。

つまり、価格上昇時点においてバブル的であっても、その技術や製品が本格的に普及すれば、その価値は正当化される。ビットコインがバブルかどうかは、ビットコインが普及するかどうかで決まるものであり、現在の価格水準とは直接関係しないのだ。

ビットコインに関する先ほどの試算は、あくまで金融資産をベースにした「頭の体操」であり、筆者はビットコインへの投資を推奨しているわけではない。

 

だが筆者がもっとも主張したいのは「猛烈なスピードで値上がりしている」「得体が知れない」といった情緒的な理由だけでビットコインをヒステリックに批判し、また投資の対象として完全に除外することは、あまりよい結果をもたらさないということである。

確かに、現時点においてビットコインは未知数の通貨である。結局は普及せず、無価値に転落するという可能性も十分にあるだろう。だが、こうした仮想通貨に対して大きな期待が寄せられたということは、既存の通貨制度の不備が浮き彫りになったということでもある。

新しい技術や概念の登場は、現在の制度をどう改善すべきなのかについて示した、一種の「啓示」であると考えた方が社会にとってよほど有益だろう。むしろ人生100年時代を想定した資産運用を考える上では、こうした社会の大きな変化を意識することが、重要になる。