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止まれ暴走老人!脳を見て分かった「高齢交通事故」急増の理由

ウルトラ高齢社会が直面する深刻な課題
朴 啓彰 プロフィール

警察庁はどんな対策をしているのか?

高齢ドライバーの悲惨な事故が多発している現状を打開するために、警察庁は認知症ドライバーの早期発見と運転免許証の自主返納促進に取り組んでいます。

認知症ドライバーの早期発見のために、平成29年3月に道路交通法が改正されました。

75歳以上のドライバーは3年ごとの免許更新時に認知機能検査が義務づけられていますが、従来よりも厳しい基準になり「認知症のおそれ」と判定された場合に、医師の診断が義務化されました。

また、免許更新時でなくとも一定の交通違反をした(駐車違反とシートベルト装着違反以外の全ての違反が含まれる)場合には、臨時認知機能検査を受けて「認知症のおそれ」と判定されると医師の診断が義務化されます。

認知症ドライバーを水際で防ぐ対策でありますが、今年上半期(1~6月)の集計では一定の効果が出ています。

75歳以上の高齢ドライバーによる交通死亡事故は190件と前年同期(218件)より12.8%減りました(警察庁報告)。ただし、事故全体に占める割合は1割強であり依然として高水準を維持しています。

 

ところで、認知症と正常とのボーダーラインとして軽度認知障害(MCI: mild cognitive impairment)という病態があります。

2013年の厚生労働省の行った全国調査で、認知症は約460万人、MCIは約400万人と推定されます。認知症は運転してはいけないことになっていますが、MCIの約400万人のうち多くは運転を継続していると考えられます。

MCIから認知症への移行は、4年間の追跡調査より14%と報告されています(国立長寿医療研究センター、2017年)。1年間に換算すると、約14万人の認知症が増えることになります。

現行の高齢者講習は3年に1度でありますから、かなりの数の認知症ドライバーを見逃してしまう可能性があると思われます。2017年上半期では高齢ドライバーによる交通死亡事故が減少していますが、このまま下がり続けるのか注意深く見守る必要があります。

〔PHOTO〕iStock

一方、運転免許証の自主返納件数は順調に増えています。75歳以上の返納数は1~8月で16万3325件(暫定値)に上り、過去最多だった昨年の16万2341件を早くも超えました。

要因として、免許更新時などの認知機能検査で「認知症のおそれ」と判定された場合、医師の助言により自主返納が増えていることが考えられます。

地方の自治体で行われている返納を促す取り組み(例えば、タクシー券や商品割引などサービス)も一定の効果を及ぼしているのでしょう。

ところが、高齢ドライバーの免許返納によって、社会活動・日常活動が低下し、うつ気分やうつ病発症を促し、同居人・家族の負担増につながると欧米先進国から報告されています4

安易に免許返納を促すことの問題点が指摘されているわけですが、高齢者の社会・経済・文化活動が主要原動力となるウルトラ高齢社会では、社会全体の活力を削ぐ諸刃の剣になるかもしれません。