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止まれ暴走老人!脳を見て分かった「高齢交通事故」急増の理由

ウルトラ高齢社会が直面する深刻な課題
朴 啓彰 プロフィール

高齢者対策のカギは「脳の個人差」

ここで、脳の個人差について説明しますが、下の図表はA・Bともに70歳の頭部MRI水平断面画像(画像上部が頭部前面で、丁度脳の真ん中の断面図)です。

一見して大きな違いがわかりますが、Aさんは正常な脳である一方、Bさんの脳には明らかな脳萎縮と白質病変が見られます。

脳萎縮は脳容積が減少することですが、これが進行すると頭蓋骨と脳表面との空間(硬膜下腔)が拡大し、脳の皺(脳溝)も開大します(矢印)。

白質病変(矢頭)は、中高年者から高頻度に認められ(平均では約50%)、加齢とともに増大するのです(図3)。

図3:白質病変の年代別・グレード別出現頻度(%)
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加齢、高血圧・糖尿病・高脂血症等の生活習慣病、メタボや喫煙等の生活習慣の乱れによる動脈硬化性変化のために、白質内の微細血管である髄質動脈が消失して生じた細胞外間隙であり、脳梗塞とは異なりますが循環不全部位と見なされています。

広範囲の白質病変は、認知症や脳卒中の再発と有意に関連します。大脳白質には神経線維が集まっている場所であり、高次脳機能の情報処理に関与していますので、白質病変によって脳の情報処理が遅れたり、間違ったりすると考えられています。

車の安全運転には、認知、判断・予測、操作・行動を連続して行う遂行機能(あるいは注意機能)が必須でありますが、白質病変ではこの遂行機能や注意機能が低下するのです1

我々は、脳ドック受診者から過去の交通事故歴の聞き取り調査を行い、白質病変と交通事故、特に交差点事故(交差点では注意機能がより一層求められる)との有意な相関性を報告しています2

 

また、白質病変のある高齢ドライバーは、白質病変のない高齢ドライバーと比べて、脳の情報処理が乱れる環境下(運転をしながら暗算計算をさせるというマルチタスク負荷)では一旦停止無視などの危険運転行動が有意に増え、右折時のハンドル操作のぎこちなさ(ステアリングエントロピーの増加)が有意に認められました3

脳腫瘍やてんかんのような脳疾患は言うに及ばず、健常者でも脳組織変化(白質病変)でも危険運転行動に関与することが明らかになっています。