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世界史の視点でみると分かる、中国・アリババ台頭の「大変革」の意味

官僚国家で後れをとっていたこの国が…
野口 悠紀雄 プロフィール

アリババを創始したのは、現在のCEOである馬雲(ジャック・マー)だ。

彼は、1964年生まれ。中国本土の起業家として、初めて『フォーブス』の大富豪リストに掲載された。

1990年代以降、中国には、新しい企業経営者がマー以外にも何人も生まれている。ただし、それらの人々は、何らかの意味でエスタブリッシュメントの世界から出てきた人々だ。

例えば、通信機メーカーの華為技術有限公司(ファーウエイ)のCEOである任正非は、中国人民解放軍の元幹部技術者。華為は、今でも軍と強いつながりがあると言われる。

家庭電気器具メーカー海爾集団(ハイアールグループ)のCEOである張瑞敏は、国有企業からの派遣されてきた人だ。

PCメーカーの聯想集団(レノボ)の創業者である柳伝志は、中国科学院計算技術研究所の科学者だった。彼らは、いわば上から降りてきた人々であり、創業するときに、ある程度の事業基盤を持っていた。

しかし、アリババのマーには全くそうしたことがない。

彼は、学生時代には劣等生で、大学受験には2度失敗し、三輪自動車の運転手をやっていた。その後、師範学院の英語科を卒業して、英語の教師となった。

このように、ITの知識などまったくなかったのだが、たまたまアメリカへ行った時にインターネット会社を見て感激し、95年にインターネット会社を設立した。帰国してから仲間と共にアパートの一室でアリババを立ち上げたのだ。

なお、ITの分野には、アリババと似た企業が多数現れている。

すでに巨大化したものとして、百度(バイドゥ)と騰訊(テンセント)がある。
 
それだけではない。ユニコーン企業でも、中国の躍進ぶりが印象的だ(「ユニコーン企業」とは、未公開で時価総額が10億ドル以上の企業)。

調査会社のSage UKによると、最近時点のユニコーン企業数は、アメリカ144社、中国47社だ。まだアメリカには追い付かないものの、その差が年々縮まっている。

ブロックチェーン関連の新しいプロジェクトでも、中国の躍進が目立つ。

 

中国の調査会社が作成した中国ブロックチェーン産業発展白書によると、ブロックチェーン関連企業の設立数は、これまでアメリカが世界第1位で、2位の中国との間にはだいぶ差があった。しかし、16年には、中国がアメリカを抜いて世界1となった。

なお、ブロックチェーン技術についての説明や、ブロックチェーン事業の動向については、拙著『入門 ビットコインとブロックチェーン 』(PHPビジネス新書、 2017年12月)を参照されたい。

マーのような人物が登場しているのは、注目すべき事実だ。なぜなら、中国はこれまでの長い歴史を通じて、そうした人物が活躍できる社会的な基盤を持っていなかったからである。

それを見るには、15世紀の大航海の時代にまでさかのぼる必要がある。