アメリカ 外交

対北で「米国と完全に一致」と胸を張る安倍首相にこれだけは聞きたい

あのこと、忘れていませんよね?
笠原 敏彦 プロフィール

あの事実を忘れたのか?

トランプ氏に同盟国の大統領としての信頼を置けない人は少なくないのだろう。

ある全国紙の記事で、アメリカが対北朝鮮政策で方針転換する懸念に触れてこんな件があった。

日本政府高官は『日米の政策調整はかなり緊密だ。米国が同盟国との関係をないがしろにするようなことはあり得ない』と強調する

この高官は、そうあってほしい、という期待を口にしているだけなのだろう。そうでなければ、「検証なき国」日本の健忘症シンドロームである。

ブッシュ(息子)政権時代に何が起こったか。

アメリカは、北朝鮮と核問題でディールするために、日本の懇願にも関わらず、テロ支援国家指定を解除(先月再指定)したのではなかったか。

筆者は当時、新聞社のワシントン特派員としてその経緯をつぶさにフォローした。

そこで痛感したことは、超大国アメリカの外交においても、為政者の虚栄心、名誉欲などのヒューマンファクターが大きくものを言うということだ。

この問題では、アメリカは1988年に前年の大韓航空機爆破事件を受けて北朝鮮をテロ支援国家に指定していた。

米テロ報告書は北朝鮮指定の要因として、大韓航空機爆破事件、よど号事件の赤軍派メンバー4人の保護、日本人拉致、の3件を指摘していた。

ブッシュ大統領は拉致被害者の家族と面会し、拉致問題を「決して忘れない」とマントラのように繰り返してもいた。

しかし、日本は事もなげに梯子を外される。

ブッシュ政権は2008年10月、北朝鮮の核放棄に向けた6ヵ国協議合意の実現が「核計画の申告」などで行き詰まる中、北朝鮮との「ディール」で指定を解除した。

その背景で指摘されたのは、イラク戦争泥沼化などで著しく評価の低かったブッシュ大統領が、任期(09年1月)切れが迫る中、北朝鮮核問題の解決に自らの「レガシー」を賭けたということだった。

ワシントンでは、ニクソン訪中以来の「ジャパン・パッシング(日本無視)」だという指摘さえ聞かれた出来事だ。あのとき、ブッシュ大統領を信頼し過ぎた日本外交は大きな衝撃を受けたのではなかったのか。

 

歴史は繰り返す!?

北朝鮮核問題への対応において、日米が「完全に一致」した状態は盤石か。

トランプ大統領が北朝鮮の核保有を既成事実化するようなディールを行う可能性があるか否かは、現時点では憶測の域を出るものではない。

しかし、トランプ氏が定見のある大統領でないことは誰の目にも明らかだろう。

11月の日米首脳会談後の共同記者会見でこう語った大統領だ。

首相は米国から大量の防衛装備品を購入するようになるだろう。そうすれば、ミサイルを上空で撃ち落とせる

価値観、歴史観を重視しないトランプ氏が、「北朝鮮核問題」後を見据えて東アジアの将来ビジョンを真剣に考えるということへの期待感も低い。

ならば、日米間で北朝鮮核問題の解決の在り方と、そこへ向けた手法が一致しない「想定外」の事態に備え、日本はいかなるヘッジ外交(リスク回避)の選択肢を用意しているのか。

それとも、想定外でも、「アメリカ追随」なのだろうか。

そのことが問われる日は、そう遠くはなさそうである。