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いじめられっ子たちが上村君を殺すまで【川崎中1殺人事件の真相】

なぜ普段は目立たなかった彼らが…

近年、殺人で逮捕される未成年者の数は、年間40~60人台を推移している。

事件が起こるたびに、少年たちの凄惨な事件が報じられ、凶悪な少年に対する批判が起こる。特にインターネットでは「こんな悪い奴は死刑しろ」などという言葉が飛び交うことも少なくない。

だが、私がこれまで見てきた殺人で逮捕された少年の多くは、凶悪な非行少年というより、いじめられたり、虐待をされてきたりした経験を持っている「社会的弱者」と呼ばれるような子だった。

なぜそういう少年たちが殺人を犯すのか。

2015年2月20日、川崎区の多摩川河川敷で17歳~18歳の少年A、B、Cが、中学1年の上村遼太君をカッターナイフで43回切りつけて殺害するという事件が起きた。

この度私はこの事件ルポ『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』を上梓したばかりだが、本書をもとに加害少年らの特性について考えてみたい。

 

家にも学校にも居場所がない

主犯の少年A(事件当時18歳)は、トラック運転手の日本人の父親と元ホステスのフィリピン人の母親との間に生まれたハーフだ。他に姉が2人いる。

川崎区にある家はローンで買った1軒家。祖母も同居しており、家族仲は取り立てて悪いわけではなかった。

両親のしつけは厳しかった。Aが言うことを聞かないと、父親は拳で殴ったり、足で顔を蹴ったり、6時間も正座させることがあった。母親もそれを止めず、自身もハンガーで殴るなどしていた。

公判で父親はこう語っている。

「2回口で言ってわからなければ、手を出すということは本人に言ってありました」

これが悪いこととは思わず、正しいしつけだと信じていたのだろう。

一方、小学校では同級生からハーフであることをからかわれていた。「おい、フィリピン!」と呼ばれたり、ちょっかいを出されたりするなど、いじめにあっていたのだ。

家にも、学校にも、居場所がなかったのだろう。Aは近所イトーヨーカドーにあるゲームセンターに入り浸るようになった。

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このゲームセンターは、同じようないじめられっ子や不登校児のたまり場になっていた。不良たちは川崎駅近くのゲームセンターに行くが、立場の弱い子はイトーヨーカドーで時間をつぶす。Aはそこに集まっていた同世代の子供たちと仲良くなり、グループをつくるようになった。

中学校に進学した後も、Aを待っていたのはいじめだった。友人の1人は語る。

「Aは不良グループにパシリにされてた。年下のグループからも目をつけられて不登校になったほど。

あいつはゲームセンターで仲良くなったゲームやアニメオタクの連中を引き連れて、隠れてタバコを吸っていきがってたな。不良の前では偉ぶれないから、自分より弱いオタク連中の前でいきがるんだよ。本当にせこくてビビりな奴だった」

自分より弱い子たちを集めて虚勢を張っていたのだろう。ただ、彼自身もゲームとアニメのオタクだったのだけれど。

中学卒業後、Aは一時期下級生にいじめられれて不登校になり勉強が遅れたこともあってか、全日制の高校へは合格できず、定時高校へ進学することになった。

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