メディア・マスコミ 行政・自治体 IoT

獣医学部はゴリ押しでも「電波改革は先送り」がまかり通る不可解

やっぱり「首相のお友達」が必要なのか
町田 徹 プロフィール

総務官僚は20年以上も拒否

結果は玉虫色のものとなった。

規制改革推進会議の第2次答申は、周波数の利用状況の「見える化」、5G(第5世代携帯電話)やIoT、自動運転に必要な膨大な「帯域の確保」、帯域幅単位で通信と放送のあいだに約4倍の差がある「電波利用料格差の是正」と並んで、周波数の「割当方式」に焦点を当てた。そして、何らかの価格競争の要素を含む、新たな総合評価方式の導入を求めたのだ。

 

その該当部分は、以下のようになっている。

(a)新たに割り当てる周波数帯について、その経済的価値を踏まえた金額(周波数移行、周波数共用及び混信対策等に要する費用を含む。)を競願手続にて申請し、これを含む複数の項目(人口カバー率、技術的能力等)を総合的に評価することで、価格競争の要素を含め周波数割当を決定する方式を導入する(平成30年度中に法案提出して法整備)こととし、そのための検討の場を設ける。

(b)入札価格の競り上げにより割当てを受ける者を決定するオークション制度については、メリット・デメリット、導入した各国における様々な課題も踏まえ、引き続き検討を継続する。

問題は、この文言の解釈だ。総務省筋だけでなく新聞・テレビの記者たちも、(b)を世に言う「周波数オークション」に関する記述と見て、それが「(その)メリット・デメリット、導入した各国における様々な課題も踏まえ、 引き続き検討を継続する」とされたことから、「先送り」になったと広言しているわけだ。実際、その解釈に従うのが素直だろう。

ただし、少し深読みすれば、(a)の方式を、官僚が事業者の事業計画や収支見通しを比較して周波数を割り当てる、現行の「ビューティコンテスト(比較審査方式)」の改良版ではなく、日本以外のOECD諸国が導入当初の欠陥を是正して現在行っている「周波数オークション」制度を指すと解釈し、まだオークション導入の余地があると考えることは可能かもしれない。

その場合、何回かに分けて割り当てられるとみられる5Gの周波数割り当てのうち、第2回目以降から「周波数オークション」を導入できるかもしれない。

しかしそのためには、今回の答申を閣議決定する予定の12月8日までに、規制改革推進会議もしくはその事務局が巻き返して、閣議決定文にもっと明確な文言を入れることで、「周波数オークション」制度の導入をより確実にする必要がありそうだ。

いずれにしても、このままでは「オークション導入が確定した」と読むのは難しい。平成30年中に法整備して実施に移すには、現政権が平成30年度いっぱい存続して、総務省に対してかなり強い政治的圧力をかけ続けないかぎり難しいだろう。

結果として、周波数オークションの導入は今回も見送りが確実視される。政府で公式に導入検討が始まったのは、1995年に設置された行政改革委員会規制緩和小委員会でのこととされるから、実に20年以上にわたって、総務官僚は周波数オークション導入を拒んできたことになる。

周波数をタダでもらえてしまう日本

いったい、なぜ、総務官僚はこれほど周波数オークションの導入を嫌がるのだろうか。

周波数オークションを導入した場合に考えうる弊害は、携帯電話サービスの運営に強い意欲を持つ事業者が多いと、無理な入札をして周波数の取得コストが高騰し、通信ネットワークの設備投資に回す資金が不足したり、サービス料金が上昇したり、経営が不安定になったりするリスクがあることだ。

実際、2000年ころの欧州のITバブル崩壊の主因は、こうした行き過ぎた周波数オークションが引き金になった側面が強い。ほかにも、一部の資金力が豊富な企業が周波数を独占する懸念があるとか、現行法の不備のために、外資企業が周波数を落札して安全保障が脅かされかねないといった議論もある。

それでも、ITバブル崩壊の教訓は生かされており、そうした事態を防ぐため、あえて二番札を入れた業者が落札できる制度を構築するなど、各国で対策が進んでいる。デメリットのほとんどは防げる時代になっているのである。

その一方で、ビューティコンテスト方式は行政の裁量の余地が大き過ぎて、行政と事業者のあいだで天下りを含む癒着の温床になりがちとされる。海外の携帯電話会社と比べて、契約者数などの規模の割に日本勢が高収益なのも、周波数オークションがなく、事業に必要な周波数を初期経費なしで入手できるからだとの見方がある。

コストをかけて周波数を取得する場合、早期にネットワークを構築し、サービスコストも下げ、なるたけ早く事業を軌道に乗せて費やしたコストを回収しようというインセンティブが働く。しかし、日本勢は周波数を国から無料で与えられるので、そうした意欲に乏しいというわけだ。