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「マイナンバー」導入から2年、暮らしが全然便利にならないワケ

そもそもカードに意味はあるのか

スタートダッシュどころか、最初からスッテンコロリンというのはいただけなかった。「日本品質」の神話に傷がついたばかりか、政府が目論んでいた、新幹線や原発と同じようにマイナンバーのシステムを制度ごと輸出するという「メイド・イン・ジャパン」構想も頓挫してしまった。

今年8月末の時点で、マイナンバーカードの交付枚数は約1230万枚。全対象者の9.6%と言い換えると、なるほど低空飛行だ。ただ、下方修正後の260万枚という目標から見れば約5倍とも言える。

「市町村別発行枚数」を公表させることで、競争意識を煽った成果と言えないこともないのだが、同情すべきは市町村の担当者だ。住民からは「何の役に立つのか」「少しも便利じゃない」と責め立てられ、同僚たちからも「手間が増える」「住民にどう説明すればいいのか」と厳しく問われる。

一方で、見方を変えれば、マイナンバー制度は十分に目的を達しているとも言える。外国籍の人も含めて、住民登録をしている広義の「国民」を、政府が管理できる下地が整ったということだ。2003年に住基カード(住民基本台帳データベース・システム)の発行が始まった際には、秘密保護法も通信傍受法も共謀罪関連法もまだ成立していなかった。

このような現状を鑑みると、マイナンバー制度が住民(国民)の利便向上につながるという国民の思い込み自体、大いなる錯覚に思えてくる。

そもそもマイナンバー導入の大きな目的は、利便性追求と並んで行政事務のコスト削減(簡素化・効率化)という触れ込みだったはずだが、政府は導入後も住民(国民)の請願・申請主義を改める気配はない。印鑑や住民票を廃止する動きもない。

「国民を自在に管理できるなら、たとえ国民生活が何ら便利にならずとも、開発費3200億円、年間運営費350億円は安いもの」ということなのだろうか。

 

結局、住基カードと同じでは?

マイナンバー制度が国民から見て「失敗」と映る理由は、マイナンバーカードの交付枚数が少ないことだけではなく、マイナンバーの利便性を実感できないことが大きいだろう。

だが、住民票や戸籍の交付、公共の図書館や体育館の利用、子育て支援や医療・健康管理、クレジット、銀行ATM、電子マネー、ポイント等々、多目的利用を推進すれば、用途を増やすごとに100億円とも言われる改造費がかかる。

しかも、そうした機能の多くは、住基カードでも実現可能だった。しかし、住基カードの交付枚数は再発行を合わせて1500万枚にも届かなかった。

カードの普及を進めるだけなら、自動車運転免許証や健康保険証、交通系ICカード、キャッシュカード、クレジットカード、ポイントカードなどにマイナンバーの機能を付ければいい。

もうひとつの方法は、「住民(国民)主権」の考え方を「国家主権」に転換するーー柔らかい言い方に直すと、政府のトップダウンでカードの保持を義務付けるしかないだろう。

実際、韓国で住民登録番号の利用が普及した端緒は、北朝鮮スパイの摘発だった。

義務となれば、マイナンバーカードは否応なく普及する。しかし国家主権を許せば、国による国民監視を容認することになってしまう。

結局のところ、マイナンバー制度そのもののゴールはカードの普及でも、利便性の向上でもないということだ。

総務省は「多目的利用を推進することで、国民の暮らしは便利になります」というが、ITの目線でいえば、出口・入口が増えるたびに、情報漏洩のリスクは高まるに決まっている。

「国民本位のマイナンバー制度」を本気で実現するつもりならば、まずは行政手続きの簡素化と市町村職員の負荷軽減をゴールに据え、本当に必要な策を打たねばならないのではないか。