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欧米で大論争!「クリスマス」をめぐって深刻な分断が起きている

政権中枢に入り込んだ魔女の物語
岡本 亮輔 プロフィール

「闇に包まれたホワイトハウスに光を」

ホワイトハウスのデコレーション批判やフェイク・ニュースの拡散はトランプ批判の一環ととらえて良いだろう。実際、「闇に包まれたホワイトハウスに光を取り戻そう」という主旨のツイートが見られる。

他方で、トランプ批判のために「ペイガン」という表現でメラニア夫人を攻撃し、しかもそれがある程度有効に機能する背景には、やはりキリスト教文化とそれに由来する独特の想像力があるように思われる。

ヨーロッパの古い街では、城壁で囲まれた領域の中心部に城と教会がある。中心に政治権力と宗教権力が位置しており、そこから離れるほど人間性と聖性が低下するのだ。

とりわけ城壁の外の森は、ペイガンの魔女たちが跋扈する非人間的な世界として想像されてきた。

そしてヨーロッパの民話やそれを元にしたディズニー・アニメでは、常に魔女は城の中に入り込もうとする。『白雪姫』でも『眠れる森の美女』でも、魔女が災いをもたらし、国が暗い影につつまれる。

 

前述のフェイク画像をツイートした人は、「メラニアはウィッカ(女神崇拝)なのか?ウィッカは異教の魔女だ」と告発気味に書いている。

出回っている画像には、廊下の画像に『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』のジャック・スケリントンや、『マレフィセント』(原作は『眠れる森の美女』)でアンジェリーナ・ジョリーが演じた魔女を合成したものもある。

さらに、ペイガンのメラニア夫人が実は真の大統領であり、トランプはその操り人形にすぎないといったツイートもある。こうした語りには「城の中に入り込んだ魔女」という独特の想像力があるように思われる。

〔PHOTO〕gettyimages

ホワイトハウスに入り込んだ魔女

周知のように、メラニア夫人は生粋のアメリカ育ちではなく、ヨーロッパからの移民である。

しかも英仏独といった西ヨーロッパではなく、旧ユーゴスラビアのスロベニアの出身だ。古いヨーロッパのしかも僻地からやって来た女性といったところだろう。その分、ペイガンや魔女といったイメージと結びつけやすい。

メラニア夫人はユーゴ内戦のために学業を断念して渡米した。モデルとしても通用した美しさもあってトランプの後妻となり、永住権を獲得してから20年も経たずにファーストレディに上りつめた。

メラニア夫人の来歴は、従来であれば、アメリカン・ドリームの物語として賞賛されたかもしれない。しかし、トランプ批判と結びつけられることで、権力中枢に入り込んだ魔女の物語に読み替えられたのだ。

トランプ大統領やメラニア夫人の政治家としての是非を問うことは本稿の関心ではない。

だが米国において、反トランプでリベラルを自称する人々も、批判のためにメラニア夫人の魔女イメージを強調したがる状況には違和感を覚える。

その根底にあるのは、自文化中心主義や移民排斥といったきわめてトランプ的な価値観かもしれないのである。