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週刊現代

新聞史上最高のエロス 林真理子の『愉楽にて』君は読んでいるか?

まさか日経新聞で…

堅い経済記事が並ぶ日経新聞の中で異彩を放つ林真理子氏の官能連載小説。毎朝、男女の艶めかしい情事が掲載されている。なぜ今この新聞小説が、多くのビジネスマンを惹きつけるのか。その魅力を探る。

朝から心拍数が上がる

現在、日本経済新聞の朝刊で連載されている小説『愉楽にて』をご存知だろうか(連載開始は9月6日)。

作者は『不機嫌な果実』などで知られる林真理子氏。女流作家の大御所である林氏が、男女の情事を生々しく描くこの連載が今、話題を呼んでいる。その一節をひこう。

〈「君のここが待っているからさあ……」

久坂はすばやくワンピースの裾をめくり上げた。女は両脚を少し開けて立っていたため、その間にすぐに指を置くことが出来た。中指を往復させる。絹の薄い下着だったので、亀裂をなぞることはたやすかった。

(中略)由希はこらえきれずに、傍のソファに倒れ込んだ。三十八歳の彼女は指だけであっという間に達してしまう〉(日経新聞9月15日付)

ネット上では「朝から心拍数が上がる」、「ここ数日は、あまりにも過激で、日経にこんなこと書いていいのかと心配になる」などの声が挙がっている。「新聞史上、最高のエロス」と評判なのだ。

この連載を毎日読んでいるという神戸大学大学院経営学研究科・准教授の保田隆明氏が語る。

「堅い内容が多い日経新聞内にあって、林さんの連載だけは異彩を放っている。朝から過激な文章が躍り、かなり刺激的で、強烈に印象に残る『場面』がよくあります。

全体のストーリーよりその場面、場面の印象が強い。小説を読んでいて、こういう経験はあまりないですね」

 

主人公は老舗製薬会社・副社長の久坂隆之(53歳)。久坂は創業家の長男として生まれるも、父に「何もしたくない」と宣言し、会社経営を弟に任せ、自分は40代ですでに若隠居している。その際、父から途方もない大金を譲り受け、加えて自社株の配当で年に億近い収入を得ている。

一見、ただの放蕩息子にも見えるが、京都大学史学科で日本中世史を専攻した後、アメリカ留学を経験したエリートで、語学も堪能という素性正しい富豪なのだ。

久坂は妻子と離れシンガポールで単身、悠々自適な生活を送りながら、現地の駐在員の妻やシンガポールで働く日本人女性たちと優雅に大人の関係を楽しんでいる。

久坂の容姿は中肉中背で一般的。だが、モテる。笑うと下がり気味になる目の奥には淫蕩な色を潜ませている。女たちはそれに気づかない。

「不倫は悪だ」、「コンプライアンスがどうだ」とかしましい時代にあって、淡々と情事を繰り返す久坂に、一種の憧れを抱いている読者もいるだろう。

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