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真矢ミキさんが53歳で「高卒認定試験」を受けて初めて知ったこと

おとなの「ヒトハナ」物語

今までできなかったことが、できるようになる。知らなかったことを知る、そして理解する―。何いくつ歳になっても「進化」し続ける人は、オーラが違います。体力や時間がなければ、経験と知恵と度胸でカバーして。苦労もするけれど、そのぶん感動も大きくなる!そんなおとなの「ヒトハナ」物語、教えてもらいました。

おとなだからこそ「ゴール」を決めよう

朝の情報番組のMCを務め、平日の“朝の顔”として定着した感のある真矢ミキさん。元宝塚歌劇団トップスターの女優にして、“カッコいい女”“理想の上司”などの好感度ランキングでは常に上位。同世代女性からの支持も高い。

「本当ですか!? 今朝も番組内で言葉が足りず、反省してたんです。毎日、その繰り返しです。ただ、言ったことに自分で責任を取らなくちゃいけない状況下にいますから、随分開眼しました。たくさん恥をかいたし、柔軟にもなった。生放送ではどうしたって自分の素が出てしまうので、あるがままになったとも思います」

今年9月には「高等学校卒業程度認定試験」の5教科に合格し、話題を集めた。1年ほど前から塾に通い、コツコツと受験勉強をした成果である。

「もともと大学に行って勉強したいと思ってたんですが、高校受験を前に父の転勤で阪急沿線の大阪・豊中に引っ越したら、沿線の終着駅が宝塚でした。そこで母に『受けてみたら』と言われて。真剣に受験される方には失礼ですが、記念受験という軽い気持ちでした。その肩の力が抜けていたのが幸いし……。通常の高校も合格してたんですが、宝塚音楽学校に入りました」

高卒認定の取得は、宝塚歌劇団退団時にも考えたそうだ。しかし、あまりの勉強範囲の広さに断念。そして今回、53歳にして時が満ちた。

「情報番組に出演するようになったおかげで、いろんなことに興味が深まり、知的好奇心や感覚が鋭くなってきたんです。そこで、きちんと学びたいと認定試験のことを再び考えました。例えば時事ネタも、現代社会の過去をある程度わかっているのといないのでは、理解の深さが違うと思ったんです」

まずは試験の資料を取り寄せ、過去の問題を確認。粛々と準備を始めた。

「当初は塾で勉強するだけでよかったんです。でも、おとなとしてきちんとゴールを持って取り組んだほうがいいなと考えるようになりました。音楽学校受験のときもですが、私、気軽に小舟に乗ったら、思いもしない大海原に流れ出て、『できるの!?』って状況になることが、結構あるんです(笑)」

 

カッコつけないことがカッコいい

「今年、宝塚に在団していた年月と女優になってからが、ほぼ同じになったんです。また新たな一歩かな」

“あるがまま”というご本人の言葉どおり、伸びやかにそう語る。

発言の端々には聡明さや思いやりも滲む。日々の経験に、磨かれてきた人なのだろう。

「40代の前半、すごく忙しくて、仕事をこなすことしか頭が回らない時期あったんです。そうして充実感も実感できなくなったとき、大切なのは内容なんだと気づきました。

周囲の生き生きした友人たちを見ても、“コトの充実度”次第なんだなと。高卒認定はあと3教科合格しないと取得できませんが、学ぶことそのものを大切にしたいです。今はありがたいことに充実していますが、人生、まだ挑戦を続けている身。一つずつ達成していくことが、小さな自信につながるんですよね」

人から得る刺激も、真矢さんを前に進ませるエネルギー源になっている。

「人の才能を見るのが好きなんです。結婚も、夫の才能を好きだったのが決め手でした。仕事の場でもいろんな人の才能から刺激をいただいています。おとなになると、大体のことがわかってきたぞと思いがちですが、私はその思い込みを剥がしたくて。

自分のことも『まだこんなにわかってなかった!』と客観的に笑えるようになったのが、50代になっていちばん好きなところでした。『素敵ですな、皆さん』と周りを眩しく見つつ、自分に足りないパーツを探し、それを埋めていくのが楽しい。

以前は水面下で足をバタつかせていても、華麗に美しく生きてみようじゃないかと繕ってましたけどね。もうカッコつけるのはやめました。カッコつけないことが、おとなのカッコよさかもしれませんね」

この秋は主演ドラマ「さくらの親子丼」で、女優業の新しいページを開いた。演じたのは、日常に行き場をなくした子どもや大人を迎え入れ、親子丼を振る舞う古本屋の主さくら。現代社会が抱えるリアルな歪ひずみと人の優しさを描いた、社会派人情ドラマである。

「さくらは人を助けているようで、人から学び、成長し、心のねじれを解いてもらってますね。流れる水が如く、いろんな形に変容して。今の私が、演じるべくして演じた役だと思います」 

人と関わること、挑戦を続けることで、新しい自分にも出会っていく。

「私は、川底にいる自然石ですね。激流に研磨されて丸くなった。そして、人に背中を押され、“いいところ”に流れつかせてもらってます(笑)」

(スタイリング/平澤雅佐恵 ヘア&メイク/平 笑美子 取材・文/八幡谷真弓)

おとなスタイル 2018年冬号