左から、魯煒、習近平、ザッカーバーグ。写真/gettyimages
メディア・マスコミ web 中国

ザッカーバーグも「朝貢」した中国ネット皇帝の失脚劇

習近平の逆鱗に触れた

「ネット言論統制」で権勢を強めたが…

印象的な一枚の写真がある。1人の男がパソコンに向かっている。マウスを持つその男は、偉そうにふんぞり返り、肩には力が入っている。男の周りには数人の男女が、うやうやしく立っているが、自分たちの上にのしかかるこの権力者におびえている様子がうかがえる。

この男こそ、このほど失脚した、中国政府のネット管理部門である国家インターネット情報弁公室(国家互聯網信息弁公室、略称:網信弁)の元責任者、魯煒である。写真は上海に2014年誕生したネットメディア「澎湃」を魯が視察に訪れた時のものだ。

11月21日、汚職を摘発する中央規律検査委員会はウェブサイトで、中央宣伝部元副部長(元国家インターネット情報弁公室主任)の魯煒が重大な規律違反のため、調査を受けていると発表した。魯は19回党大会後に失脚した初の正部級(閣僚級)の幹部となった。

魯は1960年1月安徽省生まれの57歳、国営通信社新華社の出身で、同社副社長を経て、北京市宣伝部、副市長を歴任、2013年から網信弁のトップである主任に就任した。魯が網信弁を牛耳っていた時期は、拙著「習近平時代のネット社会」でも指摘した、ネット管理が急激に強化され、言論の自由が大幅に後退した時期と重なる。

この中で、魯は習のネット政策の先導役として、海外のメディアからは「網絡沙皇(インターネットの皇帝)」と呼ばれるほどの権力をほしいままにした。ところが、権力を過信した結果、相次ぎ不祥事を引き起こし、習近平の逆鱗に触れたのだった。

 

ザッカーバーグの猛アピールも蹴った

魯が推し進めたのは、「大V」と呼ばれる、オピニオンリーダーを核とした政府に批判的なネット世論を抑圧し、「正能量」(プラスのエネルギー)と呼ばれる政権に肯定的な言論により、反政府寄りだった「世論の陣地を制圧」することであった。

そして同時に、中国に批判的な海外メディアやコンテンツを中国のネットから排除し、国内からのアクセスを排除する「ネット主権」を確立することだった。

魯に会ったことがあるという知人のベテラン記者は、「手八丁口八丁、才気煥発、自信満々のぎらぎらした男」だったと形容したが、習近平のネット政策の推進役として、時には海外でも存在感を示した。

中でも有名なのが、2014年に訪米した際、米国の大手ネット企業のトップと面会時のエピソードだ。

フェイスブックのザッカーバーグCEO(最高経営責任者)はオフィスに魯を迎え、自ら習近平の発言を集めた「習近平国政運営を語る」を魯に示し、「この本は同僚にもプレゼントした。社員に中国の社会主義を理解してもらいたい」とまで語った。

ザッカーバーグは、その後も大気汚染が心配される北京でジョギングをするなど、当局にPRを続けた。だが、今に至るも同社は中国市場への進出が認められていない。