企業・経営 週刊現代

日本人客が戻ってこない「さまよえる百貨店の雄」伊勢丹の憂鬱

社長の交代から半年余り
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迷いが店舗に表れる

'90年代、ファッションを強力な武器としていた伊勢丹。同社のバイヤーが見つけてくる商品を買うことこそが「かっこいい」ことだった。当時は、自分たちの売りたいものを売ればうまくいっていたのである。

しかし、それは時代を追うなかで「上から目線」「客の軽視」という欠点に変わってしまった。

ベテラン社員が言う。

「悔しいですよ。ファッションや品質のいい製品が好きで、自分がいいと思うものを売れば成功していたのに、それがいまは『上から目線』って言われるんだから。

前社長の大西さんはとくに『古き良き百貨店』への愛が強かったのですが、それは現在の経営陣も同じ。簡単には切り替えられず、みんな歯がゆい思いを抱えています」

一度、「ファッションの伊勢丹」の地位を築いたことによる弊害はほかにもある。大西前社長へのインタビュー経験もあるファッションジャーナリストの南充浩氏が言う。

「いま百貨店業界ではデパ地下が好調で、J.フロント リテイリングの大丸東京店は、1階と地下1階を食品売り場にして大成功を収めました。同社は、事業に占める不動産業の割合も高く、百貨店へのこだわりが薄いように見えます。

しかし、伊勢丹はやはり『ファッションを捨てられない』という思いがあるのでしょう。

大西前社長にインタビューした際に、水を向けると『(ファッションではなく)デパ地下が好調なのは複雑な気持ちです』とおっしゃっていた。それゆえ、デパ地下の拡大、不動産事業への移行といった大胆な改革にも出にくいのだと思います」

 

いま同社は伊勢丹新宿本店「一本足打法」だが、同店も、「インバウンドがこれだけいいのに、売り上げが前年比で約102%というのは、まったく安心できる数字ではない」(前出・中堅社員)。

こうした状況を受け、同店でも変化が起こっているというが、それがどう転ぶかはわからない。前出の新宿本店で働く社員が言う。

「最近は、本当に品質のいいものというよりも、よく売れる商品を中心にしたリアルな品ぞろえになっている面があります。そのせいか、『おしゃれだな』と思うお客様が少なくなりました。

たまにそういうお客様が来ても、何も買わずに帰ってしまう。購買意欲の高い人が別の場所で買ってしまっていると思います。そういうお客様に、完全にソッポを向かれたときのことを考えると恐ろしい」

「百貨店の雄」は、憂鬱な顔で悩み続けている。

「週刊現代」2017年12月2日号より