企業・経営 週刊現代

日本人客が戻ってこない「さまよえる百貨店の雄」伊勢丹の憂鬱

社長の交代から半年余り
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「強すぎる本店」の弊害

今回発表された中期経営計画で、ほぼ唯一ポジティブな具体的施策として打ち出されたのが、デジタル化を進めることだった。しかし、前出の中堅社員によれば、それも本気だとはまったく思えないという。

「ECに力を入れるとしていますが、実は'20年度の営業利益目標350億円にはECによる利益がほとんど入っていません。本当に成功すると考えているのかどうか……。

ECの部署には優秀な人材が集まりにくいとも聞きます。そもそもITに詳しい人材が少ないうえ、保守的な会社ですから、各部署が優秀な社員を囲い込み、ECのような新規事業には『お荷物社員』がまわされる傾向がある。しかし、有効な対策は打たれていません。

その結果、'16年から'17年にかけて伊勢丹のサイトに掲載されている洋服の型数(モデル数)は減っている。いまの時代に掲載型数が減るなんて、ほかの会社だったらありえないでしょう。

また、中国でECが爆発的に盛り上がる11月11日の『ダブルイレブン』に向けて、国内のある取引先とコラボしていたのですが、準備が間に合わない案件が出て、取引先から不満の声が上がったほどでした」

 

リアル店舗も当然不振だ。今期に入ってから売り上げが上がっているのは、伊勢丹のなかでは新宿本店(前期比102.6%)、静岡伊勢丹(102.7%)くらい。

あとは、相模原店が94.8%、府中店が93.5%と軒並み売り上げを落としている。伊勢丹新宿本店で働く社員が指摘する。

「新宿本店以外の店舗が軽視される傾向があるんです。三越伊勢丹という会社は、伊勢丹新宿本店が全体の売り上げの約2割を稼ぎ出しており、同店を『神格化』する傾向が強い。

そのため、各店にもバイヤーが配置されているものの、実質的に新宿本店のバイヤーが仕入れ内容を決定してきました。

結局は、『新宿本店が考えた各店戦略』となり、店舗の特性に合わせた売り方ができていなかったということ。最近それが社内でも指摘されるようになり始めましたが、遅すぎだと思う」

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前出・中堅社員も言う。

「そもそも伊勢丹は顧客分析が弱いと他社からも言われます。先日、中期の経営計画を現場レベルの施策に落とし込む『シーズンプラン』の会議が開かれ、お客様のターゲットが設定されたのですが、単価と来店頻度が高い人が上客であるという結果が報告されているだけで、そのお客様が何を考え、どういう動機で店を訪れているのか、という点は議論していませんでした」

顧客分析が弱いという欠点は、今回ファンドに売り出すことになったスーパー・クイーンズ伊勢丹の運営にもいえそうだ。

高級スーパーで成功を収めた「成城石井」の創業者・石井良明氏が言う。

「クイーンズ伊勢丹は店舗の面積が広すぎてコストがかさんだのが失敗の原因でしょう。高級食材を買ってくれる人というのは、そんなにいない。

売れるものを絞り、コストを抑えたほうがよかったと思う。お客さんがどんな人で、どれくらいの数がいるのかわかっていないんじゃないかな」