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『漫画 君たちはどう生きるか』誕生を支えた、もう一人の男

無名の漫画家が、なぜこの本を…?

「僕にこの漫画を描くきっかけをくださったのは、原田さんという編集者の方なんです。といっても、実はお会いしたことはないんですよね。完成してから本をお渡ししたかったけれど、できなかった。

昨年9月に、急に亡くなってしまったからなんです」

8月24日に発売されるや、わずか3カ月で70万部の大ヒット、連日書籍売り上げナンバー1を記録している『漫画 君たちはどう生きるか』。雑誌「世界」の初代編集長を務めた吉野源三郎さんが1937年に刊行した、名著と言われる小説『君たちはどう生きるか』を漫画化したものだ。

「anan」の元編集長でもあるマガジンハウスの執行役員・鉄尾周一さんが企画し、『嫌われる勇気』『さおだけ屋はなぜ潰れないのか』などヒット作で知られる柿内芳文さんが担当編集をつとめた。作画を担当した羽賀さんのマネージメントを勤めるのは、『宇宙兄弟』などで知られるコルクの佐渡島庸平さん。まさにスター編集者たちによる渾身作だ。

デビュー作『ケシゴムライフ』もクラウドファンディングでようやく単行本にしたほど、まったく無名な漫画家だった羽賀翔一さんにとって、この作品は初めてのヒット作。

しかし漫画を読めば読むほど、「羽賀さんだからこそ」描けた作品であることがわかる。

大ヒット作誕生までの物語を、当の羽賀さんに語ってもらった。

マガジンハウスの鉄尾さんが小説『君たちはどう生きるか』の漫画版の企画をしたとき、鉄尾さんはずっと雑誌と書籍の編集者としてやってきたから、どうやって漫画を作ればいいのかがわからなかったそうです。そこで、講談社の原田隆さんという親しい編集者の方に相談をしたんです。当時、原田さんは講談社で書籍の局次長を勤められていたそうです。

原田さんは即答で僕の名前を出してくれて、「『ケシゴムライフ』を書いた羽賀くんという漫画家がいる。彼の絵と『君たちはどう生きるか』の世界観は合うんじゃないか」って言ってくれたとか。

そこからすべてが始まりました。

 

『君たちはどう生きるか』は「コペル君」というあだ名をもつ、中学二年生の本田潤一の成長物語。コペル君はお父さんと死別し、お母さんと二人で暮らしている。もう一人の主人公といえる「おじさん」は潤一に「コペル君」というあだ名をつけた張本人で、コペル君の母親の実弟。コペル君の父親に気持ちを託され、コペル君のひそかなメンターとして、一番の親友として、コペル君にとって欠かせない存在だ。

©羽賀翔一/吉野源三郎『漫画 君たちはどう生きるか』マガジンハウス

いじめられっ子をかばう友人に出会ったり、貧乏な友人の強さを知ったり、友人との約束をやぶってしまったり――学校で様々な出来事を経験するたびに、コペル君はおじさんと話をする。そしておじさんはコペル君がいつか読んでくれるようにと、その時に語ったことやさらなるメッセージを一冊のノートに残す。


小説も漫画も、コペル君の物語に「おじさんのノート」が挟み込まれるようにして作られている。